第6巻【近世・近代・現代編】- 第8章:女性の活動
菅谷地区婦人会『つどい』創刊号1958
結婚十年
平沢 西いね
月日の流れは早いもので返り見れば生れた懐しい家や幼なじみの友と別れて嫁いだのは、ついこの間のやうな気がするのにもう十年は何の事もなく過ぎた。嫁いで一、二年は実家にゆくのばかり楽しみにし、何時になったらこの土地の人と生れ故郷の人達のように話したり笑ったり出来るのかしら、どこえ行っても嫁と言ふ言葉に身が引けるような気持で居たが、間もなく婦人会が発足し、近所の人達と一所に入会し、年重なる毎に出席する数も多くなり、その度毎お母さんに「早く仕度をして行きなさい」と気持よく出して戴き、交はる人の数も多く、その度毎何かと雑談も交はせるやうになった。総会や料理の講習又秋のレクリェーションと皆待遠しい。一年、一年と深い親しみの湧いてくる村の皆様、いつしか実家へ行くのも遠くなり、日々の仕事に張合のある今日この頃です。今は全く働く喜びがしみじみと胸に泌(し)み、本当に主婦としての幸福を感じて来ました。一日の除草を終えて汗にぬれたブラウスに夕風を受けて家路へ急ぐ。「母ちゃん」と迎へる我が子に笑顔を返へし夕飯も済み風呂に入り、ひととき望みは山とありますが何時も和やかなふんい気の流れる我が家を持った事をこの上もない幸せと心に感謝して居ります。お父さんにお母さんそして私達親子、健康で明るく働けるこの家庭、いつまでもいつまでも限りなくつづくよう知らず知らず神に願はずには居られない気持です。
菅谷地区婦人会『つどい』創刊号 1958年(昭和33)11月