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第6巻【近世・近代・現代編】- 第6章:くらし

第3節:日記

冨岡寅吉日記

昭和21年(1946)6月


六月一日 土 晴 161
茶わんかご三ツ、四升入れ半ザル一ツ作くり上げる。自転車のパンクはり、うまくはれた。草刈りかご二ツ。形良好なり。作くり上げる。マッチの配給三〇箱分四円。


六月二日 日 晴
草も今朝はみっしり刈れた。祖父さん、神戸の方へ行く。 魚入れびく六寸五分式一ツ。かけごも作くる。うまく出来た。山王前へ作入れ。豆。大沢伊三郎方で大いに御馳歩になる。


六月三日 月 晴 162・163
昨日の所で草刈り。味噌コシ五ツつくりはじめた。形だいたい良好なり苗とり腰掛け二ツ作くり上げる。魚取りに行く。あんま釣り*1に行ったが釣れぬので力針*2をやる。大きな奴がつれる。

*1:談)通称つーこーつーこー。浮きも重しもなしに竿に糸をつけて一番小さい金針に川虫をつけて釣る。
*2:談)蚊針で釣る。他にたたきという釣り方もあり、吉野大尉や新井一平が得意だった。餌をまいて魚を集めて釣り針に引っ掻けて取る方法。


六月四日 火 雨
草刈り中止す。雨が降ってゐた。子供のブッタイ*1作くり。尺が二寸ばかり短い様だ。午前中一ツく作り上げ、午后、理昌宅へ行って同じ奴を一つ作くり上げる。蚊針に行って、糸を切る。以上

*1:魚採りの道具。


六月五日 水 くもり・雨 164
草刈り、早く帰る。草刈りかご四ツ作くる。少し小振りのを二ツ。前中工場*1へ草刈りかご二ツ。くもってゐて雨が降ったり止んだり。野村磯七方へ草刈りかご二ツ。

*1:談)疎開してきた工場で菅谷の現アサヒ運輸のあたりにあった。鋳物で水道のバルブを作っていた。


六月六日 木 晴 165
山草刈り。二斗ザルのふちまき。籠箕作くり、三ツ。午前中、作くり上げる。馬小屋の肥出し。西原へ小豆まき。魚釣り。以上


六月七日 金 晴
何時もの山で草刈り。祖父さんと二人で平村(たいらむら)の池ノ入(いけのいり)、畑武重宅へ戸、障子を持ちに行く。今日はよい日である。残金五〇円、チップ十円。自転車のパンクはり。良好でない。いねのごむ靴を交換する。


六月八日 土 晴
此處いく晩か魚取りをしたので昼間はねむい。子供の草刈りかご一ツ作くり上げる。西原のヤッコ*1少し刈る。桑の木割り。桑切り。濱野作松君復員。以上

*1:談)大麦の品種八萩のこと。


六月九日 日 くもり 167
一人で草刈り。桑切り。桑原の掘返えし。夕方迄、桑切り。くもってゐてむし暑かった。毛虫にはわれてかゆかった。雨も少し降ってきた。以上


六月十日 月 くもり 時の記念日
暫く振りで耕地へ草刈りに行った。村田福次君復員す。柴田方の蚕の上蔟、午前中。実組へ肥料配給。午后、分配す。自転車のスポンヂチューブ配給になる、百八十五円。以上


六月十一日 火 雨後晴 168
雨が降ってゐたので草刈りに行かずにしまった。蚕の上蔟。午前中、廻り拾ひ。午后、柴田方よりまんさん、つねさん、理昌方よりていさん、せつさん来て呉れて大いに早く終る。以上


六月十二日 水 晴 169・170
耕地で草刈り。発信 山口。大麦刈り。前畠の八萩(やはぎ)と山王前。祖父さん、かまど作くり。午后、西原の大麦刈り。ヤハギを上げる。


六月十三日 木 晴
昨夜、菅谷へ映画見に行く。吉野君きてゐた。少し話をする。草刈り。午前中、八萩の脱穀。干物に出す。午后、万力(まんりき)(大麦)上げ。山王前九三束、西原八四束。以上


六月十四日 金 晴 171
会館の下で草刈り。二瀬の上をこーぐるぐる廻って歩く。前畠の大麦刈り。少し若い様だ。午后、大麦の脱穀、五〇束。新聞配達。大麦八萩、二俵二斗、俵に入れる。よい日だった。以上


六月十五日 土 くもり 172
今朝も会館の下山で草刈り。ふんだん刈れた。人がたて下位の時に帰って来るのは気持ちがよい。大麦の脱穀、午前中五十五束、午后約四十束位。大麦上げ、前畠八十一束。


六月十六日 日 くもり 173
耕地で草を刈る。大麦の脱穀。午前中、一人で三十束。午后も他の者、繭かき。本繭十七〆強。以上


六月十七日 月 くもり・雨 174
まきを連れて中島街道へ草刈りに行く。鉄塔の下には、ほきてゐた。まきと二人春蚕繭出荷、一等級十七貫三二〇匁、金額千三百八十五円。麦の脱穀、午前中終る。カッパ抜き。麦のおしのう。以上


六月十八日 火 晴・雨 175・176
中島街道で草刈り。とてもある。山王前のカッパ抜き。前畠もする。終らぬ。午后、麦じのう。くるり棒廻しで汗をしぼる。面白い。夕立雨あり。大麦四俵作くる。以上


六月十九日 水 くもり・雨
二人で草刈り。干物出し。あまりよい日ではない。カッパ抜き。桑園の除草。とてもきれいにできた。陸稲の草むしり。時々雨が降る。以上


六月二十日 木 くもり 177・178
もう草も少い。山王前の桑原掃除。陸稲の作切り。大麦のシノウ終る。俵に入れる。六俵皆かついで家に入れた。なんとむし暑い日だったらう。


六月二十一日 金 晴 179
遠くの方へ草刈りに行く。小麦刈り。農業会からきた奴二〇束あり、約一俵。小麦二十七号脱穀十六束。大麦五俵作くり一斗余る。二十一年度大麦計十七俵三斗。


六月二十二日 土 晴 180
中島街道で一人で草刈り。坊の上三号畠の甘藷の切かけ。一号畠も少しする。午后、田麦刈り。新田四畝(二〇束)、七畝(三〇束)。今晩、実組*1役員、家で一杯やる。以上

*1:大蔵第一農事実行組合。


六月二十三日 日 晴 181
山草刈り。早く刈れた。田麦刈り。新田三畝十六束、坊の上一号九一束、二号三十三束。小麦(農林)一俵作くる。長島水車へ十三〆持って行き、粉三〆持って来る。風がありよい日であった。以上


六月二十四日 月 晴
境木(さかいぎ)*1の廻りで草を刈る。何時もより手間取る。坊の上二号畠の麦刈り。畠の麦刈り切り、田麦、大田を刈る、四十九束。新田六畝四〇束。毎日毎日暑い日だ。小生、車引き、まき、午后、青校の麦刈り。以上

*1:談)現二瀬橋のあたりに大字大蔵と大字鎌形の境の太い木があった。


六月二十五日 火 くもり 182
鎌形耕地で草刈り。曽利町の田麦刈り。父、油の配給受けに行く。午前中、麦刈り終り、祖父さんと父、松山へ馬の蹄鉄に行く。甘藷の切かけ。まき、廣吉方へ手伝ひに行く。オンガーの先金買ふ、四十八円。


六月二十六日 水 晴 183
昨日の所で草刈り。草がないのであきれた。軍放出物資配給(長靴、襟巻、外トウ、手袋、包布)。小麦の脱穀四時間五〇分。終りて柴田方のをやる、四時間十分*1。夜おそく迄かかる。以上

*1:談)脱穀は人を頼んで石油発動機でやった。一時間いくらでやってもらう。この時は金井元吉さんがやっていた。


六月二十七日 木 晴
今年になって始めて根岸河原へ草刈りに行く。とてもある。米の配給六一瓩〇二〇、百十五円二〇銭。甘藷の切かけ。小麦六俵作くる。オンガーなをる。


六月二十八日 金 くもり 184
受信 山口
昨日の朝の続きで草を刈る。とてもふんだん刈れた。農業会の精米所へ大小麦各一俵持って行く。祖父さん、梅買ひに行く。田の馬鈴薯を掘る。四時頃より理昌宅の小麦の脱穀二時間十分。夜八時頃迄やる。


六月二十九日 土 くもり
根岸河原の下で草刈り。田の馬耕、午前中曽利町。午休みに油を分配する。午后、大田を耕う。終らぬ。
発信 山口・岡田 以上


六月三十日 日 くもり・晴
草刈り。大田の馬耕。午前中、六畝もやる。午休みに俵こしらへ。新田の馬耕。田がとてもかたい。小麦六俵作くる。午后、暑かった。

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