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第6巻【近世・近代・現代編】- 第6章:くらし

第3節:日記

冨岡寅吉日記

昭和15年(1940)11月


十一月一日 金曜 晴
起床:四時四十分 
就寝:二十時二十分 
登校:六時三十分 
下校:十五時四十分
 旧校庭の作業作切り
今日は一日で神社参拝であるので早く起きて神社に行き掃除をして参拝して家へ来て支度をして鍬やしないを持って行った。一時読方待賢門(たいけんもん)の戦の所。二時地理、言語の所をした。三時唱歌。君が代。明治節。国民進軍歌をした。四、五時鍬を持ち旧校庭に行き作切りをした。家へ来て土突きをした。


十一月二日 土曜 晴
起床:五時十分 
就寝:二十時二十分 
登校:七時十分 
下校:十五時二十分
 実習地麦播をした
今日は黒鍬を持って行った。朝礼をして明日の式の興業演習をした。唱歌練習が主であった。良く出来たと言った。一時はそれで終った。二時作業、鍬を持ち旧校庭の実習地へ行った。自分は、肥ひきの訳であった。昼までしたら終った。麦を二作まいた。武道はしない 家へ来ていろいろした


十一月三日 日曜 晴
起床:五時十分 
就寝:二十時三十分 
登校:七時二十分 
下校:十八時五十分
明治節 神社で剣道をした
平沢から出征兵士*1が出た。学校で明治節の式をした。終って剣道の習 旧教室。神社に行き練習をした。昼食して始めた。高点試合をして女生徒のなぎなたがあった。野試合と言って面に果子*2をつけてした。敵の大将の果子を下した。これは面白かった。

*1:平沢村田富次東部第十三部隊応召。
*2:菓子。


十一月四日 月曜 晴
起床:五時十分 
就寝:二十時二十分 
登校:七時十分 
下校:十八時二十分
 農業当番であった。
支度をして行った。村田君は朝当番であった。四人でいそいで学校に向った。昨日は新しい先生の紹介式があった。一時修身徳器。高崎正風の話。二時算術P42P43をした。三時農業肥料の成分。四時理科循環器面白い。五時八日にやる部会大育祭*1の菅谷学校だけの習をした。農業当番であった。

*1:菅谷部会(菅谷村・七郷村・福田村・宮前村)体育祭。


十一月五日 火曜 晴
起床:五時四十分 
就寝:二十時二十分 
登校:七時二十分 
下校:十七時十分
 麦播の手伝
何時も起きると外は薄暗く物は見えない。農家では猫の手でもかりたいと言ふ忙しさだ。学校に行った。一時算術P43(4)(5) ?(ママ)。二時読方待賢門の戦面白。二時国史洋学の発達と開港の始末。四時体操しないで明日の用意。五時五年以上明日のよ行演習の習 校旗を持った。家へ来て麦播の手伝


十一月六日 水曜 晴
起床:五時十分 
就寝:二十時二十分 
登校:七時二十分 
下校:十七時十分
 予行演習
今日は旧部会の二千六百奉祝の予行演習かあるのであり支度をして学校に行った。朝礼をした後で唱歌練習。その中に、鎌形。宮前。福田。七郷など各校が来た。神社参拝。建国体操。愛国行進曲遊戯。イッペイ*1。ブンレツ*2などした。後かたづけをして家へ来た。大工さんの手伝をした。

*1:閲兵。
*2:分列行進。


十一月七日 木曜 曇
起床:五時 
就寝:二十時五十分 
登校:六時十分 
下校:十時三十分
 建前
今日は建前なので早く起き支度をして菅谷に使があるので自転車で行った。一時読方「晩鐘」。二時自習……?(ママ)……。これでひまをもらって家へ来た。手伝ひの者が四人来た。大工さんまし七人家に登った。とても大きなものである。夕方暗くなるまでした。水草の木を切りに行った


十一月八日 金曜 晴
起床:六時十分 
就寝:二十時五十分 
登校:七時十分 
下校:十五時
 紀元二千六百年記念大育祭
今日は旧部会の紀元二千六百年紀年大育祭が始行される。学校に行き朝当番をした。線ひきをした。神社参拝、街道行進をした。分列もした。菅谷の学校の生徒は木まじめ*1であった。終って家へ来てさつまほりの手伝ひをした。
 [欄外]受信 大久保高則さん

*1:生真面目。


十一月九日 土曜 晴
起床:五時十分 
就寝:二十一時十分 
登校:六時五十分 
下校:十二時十分
 しげじゅさん無言のがいせん
今日は何時もよりとても涼しかった。風はあまりなかった。菅谷に使があり用をたした。黒衣倹狹の本を関根君にかりた。一時算術P43矩形と正方形。二時読方「晩鐘」の所。三時体操走足をした。ボール競争は面白かった。午後四時二十幾分かに藤縄茂樹さんの無言のがいせんである。


十一月十日 日曜 晴
起床:五時 
就寝:二十時三十分 
登校:七時十分 
下校:十二時十分
 二千六百年記念祝典
皇紀二千六百年記念の祝いの式が校庭で行われる。学校に行き遊んだ。サイレンが鳴り、庭に集り式をした。菅谷神社に参拝し旗行列をやった。菅谷の市街を廻って歩いた。家へ来て昼食して甘藷切り機械をかりに行った。畠へ甘藷ほりに行った。一まい畠がほり切った。


十一月十一日 月曜 晴
起床:五時 
就寝:二十時三十分 
登校:七時二十分 
下校:十三時十分
 麦の播種
今日より学校は九時始まりである。学校に行き週番なので先生の所へ行った。ボールをした。十時朝礼をした。今日は二千六百年奉祝の為事業はしないで家へ来た。昼食して甘藷畠に麦播きに行った。いもほりや甘藷ほりをした。面白かった。


十一月十二日 火曜 曇
起床:五時十分 
就寝:二十時二十分 
登校:七時四十分 
下校:十二時二十分
 雨降り
秋雨が降って居たので寒かった。下駄をはいて学校に行った。一時、算術、自習。杉山先生は来なかった。二時読方自習 全教員は松山に行く為二時間でおわりになった*1。家へ来て地図をかいた。箱をつくった。

*1:松山、菅谷部会の国民学校講習会が松山第一小学校で開かれたため。


十一月十三日 水曜 曇
起床:五時十分 
就寝:二十時十分 
登校:七時三十分 
下校:十七時十分
 夕方雨降り出す
天気は良好となりそうだった。支度をして学校に行った。ボールをした。とても寒い。一時算術P48幾何弓形の面積。二時地理国家。三時理科血液の循環。四時書方去年、今夜待清涼秋思詩篇独り断つ腸(はらわた)*1ヲ書いた。農業当番をして家へ来ないでボールをした。金井菊次さんの帰くわん

*1:菅原道真の「恩賜御衣」。「去年今夜待清涼。秋思詩篇獨断腸。恩賜御衣今在此。捧持毎日拝餘香。」(『菅家後集』九月十日)


十一月十四日 木曜 晴
起床:五時二十分
就寝:二十一時四十分
登校:七時五十分
下校:十八時二十分
 農業実習
今朝は朝ねぼうをしてしまった。学校に行きボールをした。一時、読方、楽地。二時国史、開港の始末。三時唱歌野分。四時砂はこび。五時六時農業実習。週番日誌をつけて家へ来た。


十一月十五日 金曜 晴
起床:五時二十分 
就寝:二十時五十分 
登校:七時五十分 
下校:十六時四十分
 竹引きに行った [欄外]かやのつり手の供出
もう早く起きると庭あたりは寒い。支度をして山下君の家へ行った。皆すぐ集った。ボールをした。国旗掲揚。一時修身徳器公益世務。二時読方楽地をした。三時地理国家植民地。四時体操ボール等した。五時図画晩秋をした。家へ来て竹ひきに行った。


十一月十六日 土曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時六〇分
登校:七時三十分
下校:十六時
 車へ使に行った
今朝は守に起こされた。守は朝当番であった。使に行く為自転車で行った。今日から訓練。中学生の合ぺい大演習が始行される。一時読方第一読書。二時算術P44の(2)[レンズ形の図あり]の面積。三時体操分列の習。週番日誌をつけて水車へ廻った。麺を三十本持って来た。


十一月十七日 日曜 晴
起床:四時三十分 
就寝:二十時四十分 
登校: 
下校:
 屋根屋の手伝
今日は早く起きた。鎌形の家に麦からをかりに行った。家へ来て朝食してリヤカーを引いて麦からを持ちに行った。(百七〇たば)。家のうもはこんだ。よしちゃんの家百、力造さん百たば。はこんだり針*1かえしをした。とても面白かった。

*1:草葺屋根の屋根替え、修理のとき、カヤを押さえるための縄を通すための竹の針。マダケの先を斜めに切って尖らせ、先端から七寸位の所に縄を通す穴をあけたもの。


十一月十八日 月曜 曇
起床:四時二十分 
就寝:二十時五十分 
登校:七時五十分 
下校:□
 屋根ふきの手伝
暗い中に起きた。大沢君の家の竹やぶに竹の枝を持ちに行った。暗いので良く見えなかった。支度をして自転車で学校に行った。ボールをした。第一時修身(公益世務)をして早引で家へ来て屋根ふきの手伝麦棹(から)運びをした。針かえしをした。


十一月十九日 火曜 晴
起床:五時十分 
就寝:二十時二十分 
登校:七時十分 
下校:十六時二十分
 兵隊送り。
今日は朝当番なので早く支度をして山下君の家に行った。掃除をして出征兵士栗原登君*1を見送った。一時算術対称形P44。二時読方武蔵野。三時ズックの配給 足の長さ二十六cm。四時読方武蔵野続き。五時唱歌野分をした。家へ来たら暗くなった。屋根ふきをした。

*1:志賀栗原登東部第七十四部隊応召。


十一月二十日 水曜 曇
起床:五時十分 
就寝:二十時二十分 
登校:七時二十分 
下校:十六時十分
 稲刈り
朝は空が曇って居た。今朝は早く学校に行った。ボールをした。先生は小川に行って居ない*1。一時算術無頭かしかった 自習。二時読方武蔵野(二)の全文書取り。三時書方去年今夜清涼秋思詩十一頁。今日は三時間で農業当番をして家へ来て菅谷に使に行き農士学校で梅精*2を買って来た。一円二〇銭であった。稲刈り

*1:小川小学校で小川町、八和田村、竹沢村、七郷村、菅谷村、玉川村の体力検定が実施されたためか。
*2:梅のエキス。下痢止め。


十一月二十一日 木曜 晴
起床:五時十分 
就寝:二十時五十分 
登校:七時二十分 
下校:十五時二十分
 稲刈り
今朝は暗い中に起きた。学校に行きボールをした。一時読方武蔵野。二時国史大政奉還。三時は先生が一年の組へ事業を見に行った。四時自習。先生は二年。下田先生は居ない為四時間。角力の選手をきめた。自分もなった。家へ来て稲運搬の手伝


十一月二十二日 金曜 晴
起床:五時二十分 
就寝:二十時四十分 
登校:七時三十分 
下校:十時二十分
 稲刈り
台湾の叔母さんが昨日御客に来た。自転車で学校に行った。朝礼をした。一時修身公益世務の所 金原明善の話。一時間して早引をした。家へ来たら十一時過ぎた。田に行き稲刈りをした。昼食して又田に行った。叔母さんは帰った。稲刈りに行った。


十一月二十三日 土曜 曇
起床:五時十分 
就寝:二十時三十分 
登校: 
下校:
新嘗祭 角力
新嘗祭の為学校は休みである。朝食して田に行った。麦播きの手伝作切りをした。つゆがかわいた時分稲刈りに行った。昼食して農士学校の角力に行った。自分は高崎として負けた。農士学校の生徒のしたのを見た

日本農士学校社稷祭。


十一月二十四日 日曜 曇
起床:五時十分 
就寝:二十時四十分 
登校: 
下校:
 麦播きの手伝
日曜日である。朝食して支度をして田に行った。肥引きをした。作切りもした。富岡運造さんが来てくれた。昼食して稲上げに行った。馬が八だ*1。リヤカーで七十五束運搬した。すい風呂*2を物置に入れた。甘藷を切った(馬鈴薯)

*1:駄。一駄は稲の束を馬の背に六束ずつ分け十二束。
*2:風呂桶。


十一月二十五日 月曜 晴
起床:五時十分 
就寝:二十時四十分 
登校:七時十分 
下校:十七時二十分
 手工をした
早く起きた。つるし柿をつるった。手工があるので道具を持って行った。朝礼で西ヲンジキン望公のおかくれの話をした。一時修身、公益世務。二時算術、P46対称形。三時理科、循環器。四時体操、分列をした。五時手工。掃除をして家へ来たらくらくなった。


十一月二十六日 火曜 曇晴
起床:五時二十分 
就寝:二十時四十分 
登校:七時二十分 
下校:十七時十分
 考査
時雨が降って居た。今日は雨降りかと思った。きょう練の支度をして行った。一時読方斎田田植式の所。雨は止んだ。二時読方考査。三時算術P47多面体。四時分列の習。却判(ゲートル)*1をまき帽子をかぶった。唱歌をした。野分けをした。山も歌った。家へ来て使に行った。

*1:脚絆。


十一月二十七日 水曜 晴
起床:五時二十分 
就寝:二十時四十分 
登校:七時十分 
下校:十八時十分
 大掃除
今日も二十八日の練習がある。用意をして行った。一時算術P47多面体。二時地理算術自習正二十面体。三時地理、政体。昼食して当日の練習の支度をして外に出た。四時練習をした。五時大掃除をした。明日の支度をした。家へ来て色々した。


十一月二十八日 木曜 曇
起床:五時十分 
就寝:二十時三十分 
登校:六時二十分 
下校:十二時四十分
 査閲があった。
今日は二十八日庭は掃除せられ、人もはりきっ[て]居た。査閲の当日であった。サイレンが鳴った。査閲官中佐殿が御見になった。小学校のイッペイを受けられた。教練の人達の体操目の前て見た。研究科の生徒の演習を見た。小銃機関銃などでにぎやかだった。分列をした。査閲官殿におほめにあづかった。土かけ。


十一月二十九日 金曜 曇
起床:五時十分 
就寝:二十時三十分 
登校:七時二十分 
下校:十八時二十分
 ポスター
何時も猫が寝て居る。今朝は霜もなくあたゝかかった。学校に行った。一時修身公益世務。二時読方斎田田植式條紀□。三時地理政体。四時図画火防デーのポスター。五時続きをした。三枚。放課後もした。

大蔵区常会開催。


十一月三十日 土曜 曇
起床:五時十分 
就寝:二十時五十分 
登校:七時二十分 
下校:十三時二十分
 稲こき
今日は雨が降って居た。傘を持ち学校に行った。正二十面体を作くった。朝礼をした。防火デー。犯罪予防デーの話をした。一時読方斎田田植式。二時防火デーのポスター。三時続きをした。掃除をして家へ来た。叔母さんが御客に来た。稲こきの手伝ひをした。

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