第6巻【近世・近代・現代編】- 第6章:くらし
冨岡寅吉日記
十二月一日 日曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時四十分
登校:
下校:
稲こきをしたです。
夕べの風は大きかった。庭に木の葉がちらかって居た。神社参拝に行った。火防デーである。警防団員は神社に集まった。稲こきをした。警防団の人が自転車で幾人も旗をもって通った。家を廻って歩るった。叔母さんがかへった。午後も稲はたきをした
十二月二日 月曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時二十分
登校:六時二十分
下校:十八時五十分
農業当番
空は晴れて居たので霜は多く降りて居た。朝当番なので早く支度をして行った。朝礼をした。週番の話。三時。算術P49P50多面体。一時修身公益世務金原明善。二時四年松研究事業。四時慰問文をかいた。五時手工くぎを打った。農業当番をして来た。
十二月三日 火曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時十分
登校:七時二十分
下校:十六時十分
自転車のパンクはり
朝寝をしてしまった。霜は降りて居なかった。一時読方大嘗祭。二時六年竹の研究事業。三時国史大政奉還。四時体操個人ボール。五時唱歌。野分け、女の月見草。明日地理の変り*1:読方持参の話。自転車屋へより家へ帰って来た。稲こきを少しした 以上。
*1:代り。
十二月四日 水曜 晴
起床:五時
就寝:二十時二十分
登校:七時十分
下校:十六時二十分
藁こぎをした。
大霜であった。庭、畠、屋根も真白であった。一時算術、P50二面角。二時読方大嘗祭由来。三時理科呼吸器。音声。四時書方。清書(去年今夜待清涼秋思詩篇独断腸恩賜御衣今在此捧持毎日拝餘香。(菅家後集ニ拠ル)。五時武道切かえし。柔道も少しした。藁こぎ
十二月五日 木曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時二十分
登校:七時二十分
下校:十三時二十分
稲こぎ 車の正三さんが来た 第一日
霜も少く温かかった。「テンブリ*1」を持ち学校に行った。自習をした。西園寺公望公の国葬*2の為朝礼をしなかった。一時国史、女の事について話。?(ママ)。二時読方、第五、六課をした。三時綴方をかえし模範文を読んだ 国葬の話。(犯罪予防デー)。家へ来て米をあおったり。はこんだりした。
*1:唐鍬。
*2:故西園寺公望国葬執行。
十二月六日 金曜 曇
起床:五時二十分
就寝:二十時二十分
登校:七時十分
下校:十六時四十分
乾(いぬい) 犯罪予防デー第二日
庭のしびをはきまとめた。学校に行く時分は雲って居た。自習をした。とても涼しく寒かった。運動したら暖くなった。一時修身国憲国法。二時読方、祭祀と農業について。三時地理、正倉院について話。司法をした。四時体操。昼休みに机をとりかえた。大野角蔵君と並んだ。五時図画をした。犯罪予防週間のコウコクくばり
十二月七日 土曜 曇
起床:五時十分
就寝:二十時
登校:七時二十分
下校:十六時十分
農業当番であった。
初冬であるが霜は降りない。今朝も暖かかった。学校に行く時分は寒かった。一時読方蓑蟲をした。二時算術P50角錐をした。三時体操下田先生指導 □体操、鉄棒など歩足もした。農業当番で下肥のかえだしなどをした。鍛練馬の鍛練か校庭で始行された。家へ来て自習をした。
十二月八日 日曜 晴
起床:五時二十分
就寝:二十時
登校:
下校:
農休み第二日
農休みである。おひ町の宿などで朝から忙がしかった。掃除などした。遊びに行った。河原で遊んだりした。昼食して又行った。鉄砲を作くった。岩澤*1、高瀬*2が来た。かくねっこをした。面白く遊んだ。
*1:岩澤昭二。当時高等科一年生。
*2:高瀬清三。同級生。
十二月九日 月曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時二十分
登校:七時二十分
下校:十五時二十分
農休み三日目
支度をして行った。渡り鳥を書いた紙をわすれて取りに来た。朝礼をして明日の話をした。一時算術P52(平面と−。二時読方蓑虫に渡り鳥。三時農業考査。四時理科呼吸の衛生をした。五時大掃除をした。手工を上げた。家へ来て鉄砲を作りました。
十二月十日 火曜 晴
起床:五時十分
就寝:十九時五十分
登校:七時二十分
下校:十二時四十分
農休み終りました。
今日はもらい農上りである。部会の先生が読方を見に来た朝礼をした。一時算術P52勾配をした。二時読方渡り鳥、見に来た。三時、自由の学科を自習した。掃除をして家へ来た。農休みなのでうんと遊んだ。鉄砲ぶち。ベースをした。とても面白く楽しかった。山下和十郎君の家の庭でした。
十二月十一日 水曜 晴
起床:五時二十分
就寝:十九時五十分
登校:七時五十分
下校:十六時二十分
使をした。
いかにも冬らしくなった。今までなって居た柿も落ちつくした。太陽はきらめく。学校に行きコンパスを買った。一時算術、P54多面体の体積。二時地理、外交、軍備。三時理科、皮膚、排泄器。四時書方。恩賜御衣今在此。捧持毎日拝餘香をかいた。五時ヂーゼル会社*1の人の話を聞いた。家へ来て玉川に使に行く。
*1:松山町にあったヂーゼル機器株式会社。この年5月に、事務所・主工場等が竣工し操業を開始していた。1990年(平成2)に(株)ゼクセルへ、2000年(平成12)に(株)ボッシュ オートモーティブ システムへ、2005年(平成17)にボッシュ(株)へ社名変更した。
十二月十二日 木曜 晴
起床:五時二十分
就寝:十九時三十分
登校:八時十分
下校:十六時十分
下田先生のはなし
白い粉をまいてやうに霜が降りて居た。学校に行き角力をした。一時読方、第八課渡り鳥。二時国史、大政奉還。三時読方、第八課、……。四時農業第三十五、馬。五時、昨日の話を下田先生がした。休み時間角力をしたので面白かった。稲こぎをした。終った。
十二月十三日 金曜 晴
起床:五時二十分
就寝:十九時五十分
登校:八時十分
下校:十五時二十分
大根こぎをした
朝寝をしたので気持ちが悪い。支度をして山下君の家へ行った。学校に行き運動をした。一時修身国憲国法。二時読方第九課田園の曲。三時地理軍備の所をした。四時体操、……。五時職業について話をするので家へ来た。そして大根の土かけや大根こぎをした 以上
七郷村大政翼賛会支部村常会部落常会結成式挙行。
十二月十四日 土曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時二十分
登校:七時二十分
下校:十六時十分
農業当番。麦ふみ
農業当番なのでべん当をもって行った。一時算術P54考査の事。二時読方第九課、田園の曲。三時体操考査をした。四時?(ママ)なし。農業当番をした。吉野君等と下肥を十二ハイくれた。家へ来て西原に作切り。前畠に麦ふみに行った。
十二月十五日 日曜 晴
起床:五時十分
就寝:十九時三十分
登校:
下校:
畠の仕事
早く起きた。大野君に借りた本を読んだ。支度をして父ととうみで米をあをった。ほし物を出した。畠山の馬苦ろうが来た。畠に作切りに行った。守は麦踏みをした。終した。午後くわ畠へ行ってけづりこみをした。おばあさんは松山の御鶏様*1に行った。以上
*1:酉の市が松山町大字日吉町の大鳥神社の祭礼と一緒になったもの。
十二月十六日 月曜 晴
起床:五時十分
就寝:十九時五十分
登校:八時二十分
下校:十六時十分
算術考査
霜が降りて居た。父と庭をはいた。兎箱を作りかけた。学校に行き算術をしらべた。一時修身国憲国法、二時、算術考査。三時農業、牛。四時理科しらべた。五時唱歌 初雁先生*1の指導。戦死を吊ふ歌。国史の考査自習。家へ来て色々した。
*1:初雁不二彦。1930(昭和5)年3月〜1950(昭和25)年3月勤務。
十二月十七日 火曜 曇
起床:五時十分
就寝:二十時十分
登校:八時十分
下校:十六時十分
国史の考査
霜は降りなく曇って居てあたゝかゝった。学校に行き国史をしらべた。一時読方、勝安芳と西郷。二時算術P55円筒、円柱錐。三時国史考査。四時澤田先生*1のわかれの式が行われた。理科をした。今日は四時間で掃除をして家へ来た。朝兎箱を作り上げた
*1:澤田道子。1940(昭和15)年3月〜8月勤務。
十二月十八日 水曜 晴
起床:五時十分
就寝:十九時二十分
登校:七時五十分
下校:十六時十分
いろいろ考査
夕べは雨が降ったりした。そして電気はきへてしまった。理科をしらべた。一時算術。二時理科考査。三時地理をした。明日のこと。四時書方十二頁をした。五時唱歌、考査をした。男女一つしょ。家へ来て竹引きに行った。上寺へ行った。帰りがおそい。
十二月十九日 木曜 晴
起床:五時二十分
就寝:二十時十分
登校:八時十分
下校:十七時十分
農業実習をした。
夕べの雨も晴て空は曇って居た。あまり寒くなかった。一時読方第十課をした。二時地理の考査をした。三時国史明治維新をした。四時農業 牛をした。五時実習、十八人で麦ふみをした。かんらんの移植をした。二十本ばかりもらって家へ来てうゑた。
十二月二十日 金曜 晴
起床:五時二十分
就寝:二十時二十分
登校:七時十分
下校:十二時二十分
修身考査
自転車で行った。へび坂で車の後押をした。学校に行き修身の考査問題をしらべた。一時修身考査。二時読方勝安芳と西郷隆盛。三時地理。教育。神社。三時間してひまをもらって来た。家へ来て米運こびをした。二十四、五俵ありや。
十二月二十一日 土曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時
登校:七時二十分
下校:十二時十分
村葬*1
今日は藤縄茂樹さんと鎌形の星野幸吉さん二人の村葬なのである。一時読方十課を終した。二時算術P55円錐角錐。三時唱歌 掃除をして支度をして安養寺へ来た。式は約二時間も続いた。村長さんを始めとして色々役の人の御しょう香が始まった。家へ来て色々した。
*1:午後1時より大蔵安養寺で故星野幸吉、故藤縄茂樹の合同村葬が執行された。
十二月二十二日 日曜 晴
起床:五時三十分
就寝:二十時十分
登校:
下校:
だんごくれ
一番おそく起きた。霜の降りるのはあたりまへである。算術の二学期の終りの方の復習をした。縄ないの手伝ひをした。そして、木を小さく切った。色々の本を見た。午後少し仕事をして神社*1へ行った。だんごを三ツづつくれてのこりをなげた。
*1:談)この神社は大蔵神社。この日根岸の愛宕神社でも祭典があったが、この神社は権現様と呼んでいた。
十二月二十三日 月曜 曇
起床:五時十分
就寝:二十時十分
登校:七時二十分
下校:十二時三十分
学校の大掃除。二千六百年のごみもなくなった。
朝当番なので早く起きて支度をして山下君の家へ行った。二人で山下和君の家へ行き一所に行った。野村*1は学校に居た。山下和君がガラスを四枚うっかいた*2。一時修身国憲国法。二時唱歌練習をした。三時大掃除をした。週番なので井戸の大掃除をした。家へ来て弓をいた。
*1:野村修彦。同級生。
*2:ガラスを割った。
十二月二十四日 火曜
起床:五時十分
就寝:二十時十分
登校:七時五十分
下校:十二時十分
弓をいた。
第二学期の終了式である。秋の名残りの雨が涙の如くぽつりぽつりと降り出し風にとばされた。朝礼をした。学校手牒をかえした。書方、図画等もかえしました。家へ来たら雨も止んで昼であった。台湾のおばさんの家へたきぎをもって居た。家へ来て弓を射た。百点
十二月二十五日 水曜 晴
起床:
就寝:
登校:
下校:
大正天皇祭 麦踏み
弓を射るのは面白い。朝食して農をする支度をして桑畠に行ってほつくわへしをした。少しなので早く出来た。家へ来て本じん畠へ行った。麦踏みをした。昼食して麦踏みをして途中でひまをもらって菅谷へ使に行った。かけづをかった*1。家へ来て麦踏みをした。
*1:子供の出生後初めて迎える初正月に贈る破魔弓(ユミハマ)。掛軸と男児は弓矢、女児は羽子板をお祝いとして暮れまでに贈る。
十二月二十六日 木曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時十分
登校:七時二十分
下校:十一時五十分
学校の西山の根刈り
学校に行くのである。朝は寒いのでつい寝坊してしまふ。寒いががまんして学校へのして行った。山には六人居た。鎌が重いので手がつかれる。だんだん人かずもまして来て仕事は益々はかどる。たいていの者は火のそばにばかり居る。農業当番で牛舎から牛ふんを引いた。家へ来て山林に行った。
十二月二十七日 金曜 晴
起床:五時二十分
就寝:二十時十分
登校:
下校:
山の木の葉はき
山に行くので支度をした。車を引いて行くと前も後も車で道がふさがる。山に行く途中車を引いて居たのであつかった。くまでではいたり根刈りをした。飛行機が空でもんどりを切って居た。昼食も山で食べたのでおいしかった。二十たばと三籠はいた。
十二月二十八日 土曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時二十分
登校:
下校:
山林の木の葉はき
今朝は一番おそく起きた。そして支度もおそくなった。かけ足でおひついだ。山に行き火を燃した。今日は昼前の中に二十四たばも作り上げた。父は馬方をした。三だんつけた。車の籠へは二籠しかはけない。学校林てぼややしのを集めた。榊も切った。弓を作りけり。強い弓
十二月二十九日 日曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時三十分
登校:
下校:
水車に行きけり。
今朝も起きるのがおそかった。十時頃までぶらぶらとして家に居た。風は空でうなって居る。遠山の水車にめんを持ちに行くので支度をした。始の中は寒くて自転車から落ちそうであった。その中にあたゝかくだんだんあつくなった。昼食をもらって喰べた。家へ来る時に吹起が来た。今夜の夕御飯は稀におひしかった。
十二月三十日 月曜 曇
起床:六時十分
就寝:二十時三十分
登校:
下校:
年の暮でいそがしい。
今朝も早くなかった。支度をしてけづりこみをした。桑の木を切った。根岸に行った。家へ木て菅谷へ行って浮子*1を買って来た。いも出しをした。頭の毛刈りもした。斉藤君*2の御産物をもらった。人参の葉を切ったりした。はこんだりした。もちつきである。
*1:浮粉。米の粉。
*2:斉藤三郎。立川飛行機に勤めていた。
十二月三十一日 火曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時三十分
登校:
下校:
今年は今年はとて暮にけり
今日は朝から天気はよかった。支度をして庭を掃除した。桑の木を引ひた。大みそかなのでいそがしい。昼食してすぐ菅谷の家へいも、人参、ごぼう、なきりみ、等持って行った。二十銭。大工の家五十銭 金井屋二十銭収入があった。桑の木切りをした。今年にない好天気であった。