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第6巻【近世・近代・現代編】- 第6章:くらし

第3節:日記

冨岡寅吉日記

昭和15年(1940)9月


九月一日 日曜 晴
起床:四時
就寝:二十時三十分
登校:
下校:
 夏期鍛錬も今日かぎり
今日は本家の富岡作次さん*1が出征するのである。暗い中に起きて行った。旗を立てた。停車場に行き出征兵士の合さつがあった。元気よく行った。家へ来て朝食して小豆や穀物をほした。守と小豆もぎをした。昼食して昼休み。ささぎ*2もぎをした。明日は学校に行くのである。

*1:大蔵富岡作次東部第九十四部隊応召。
*2:ささげ。


九月二日 月曜 曇
起床:五時
就寝:二十時三十分
登校:七時十分
下校:十八時四十分
 本郷先生にポスターを
今日より第二学期が始まるのである。支度をして学校に行った。朝礼があって校長先生の話があった。教室では先生の話があってから掃除や作業がをした。作業は土はこびであった。教室で昼食して先生の来るのを待った。図画はポスターでむづかしいのをかいた。(本郷先生)


九月三日 火曜 曇
起床:四時五十分
就寝:二十時五十分
登校:六時二十分
下校:十八時四十分
 杉山先生が来なかった。
今朝も昨日の朝の様に雨の降りそうな空模様であった。早く行くので支度をして行った。昨日の図画をかいた。遊んで居ると始まって朝礼。杉山先生は来なかった。一時算術。二時より本郷先生の御指導によりポスターを書く。昼食して又これをつゞけた。字にポスターカラーをぬった。家へ帰るのはおそくなった。子守りをした。


九月四日 水曜 晴
起床:四時三十分
就寝:二十時四十分
登校:七時十分
下校:十六時二十分
 今日もポスター
今朝は昨日の朝とちがって空は良く晴れて居た。支度をして学校に行き機械体操をした。朝礼で週番の話。一時先生の話。二時地理。三時理科石油発動機。四時書方だけれど高一年の級でポスターを書いた。掃除の時にやりなほしをかいて今日仕上げた。


九月五日 木曜 晴
起床:四時三十分
就寝:二十時二十分
登校:七時十分
下校:十五時二十分
 山から木だし。
少し曇って居た。支度をしてくつわむしに茄子をくれた。学校に川からはだしで行った。一時読方 読んだ。二時国史江戸幕府のすい運*1。三時桑の皮の伝票わたし。四時農業実習 そばを播種した。玉蜀こしの鳥よけに糸をはった。家へ来て山に木を持ちに行った。

*1:衰運。


九月六日 金曜 曇
起床:四時四十分
就寝:二十時二十分
登校:七時十分
下校:十六時三十分
 手紙くばり
今朝も曇って居た。くつわむしのゑを取りかえてやった。学校に行き機械体操をした。一時修身だが話。二時読方自習三時地理大気中の水分。四時読方自習。五時図画夏の雲。桑の皮の代金を渡した。六時武道をして家へ来た。帰りに手紙をくばった。子守りをした。夕方夜になって夕立*1

*1:この日は夜大雷雨となったようである。


九月七日 土曜 雨
起床:四時三十分
就寝:二十時四十分
登校:七時二十分
下校:十二時二十分
 雨が降った。
夕べの続きの雨で今朝も少し降って居た。学校に行く時分も降った。学校に行き自習をした。一時算術P23。幾何図形。二時読方 土に立キャクせよの所。三時時分のすきな珠算をした。家へ来て自習した。子守りをした。


九月八日 日曜 曇
起床:五時十分
就寝:二十時二十分
登校:
下校:
 昼前なわない。
今朝は雲もうすくなって居た。蚕の桑くれをした。朝食して藁をぶち守と縄ないをした。僕が二ボと五ひろ、守が一ボと十一ひろなった。昼食して栗の木出しに行ってから山に松の木など持ちに行った。成澤勝治君に算術をたのまれたのでやった。


九月九日 月曜 雨
起床:五時十分
就寝:二十時五十分
登校:七時二十分
下校:十六時二十分
 青少年義勇軍の話
朝の中は曇って居て雨の降る模様はなかった。そろばんを持って行った。朝礼があっていろいろの注意の話があった。一時修身朋友の所。二時算術珠算をしたのでよかった。三時農業蚕の事。練習。四時理科燃料。薪。石炭等。五時青少年義勇軍の話でとても有益であった。家へ来て栗の木の皮むき等


九月十日 火曜 曇
起床:五時
就寝:二十時四十分
登校:七時十分
下校:十七時五十分
 二百二十の前祝ひ
今朝は雨が降って居た。傘をさし白土手(下道)を通って学校に行った。一時、算術。珠算をした。後は幾何。二時、読方。土に立脚せよ。三時国史江戸幕府の衰運。四時、体操旧校舎で国民体操。五時、唱歌。山。農業当番なのである。そして小麦のアラ拾ひ。等して家へ来た。二百二十日前祝ひ


九月十一日 水曜 曇雨
起床:五時
就寝:二十時五十分
登校:七時二十分
下校:十五時十分
 合同訓練があった。
朝使に行った。朝食して学校に行った。時気(じき)にサイレンが鳴り外に出た。三回位練習をした。今度新しく玉川の根岸先生*1が上った。二時算術。三時理科。四時書方。合同訓練で正常歩した。それから庭を平にしたりタイルいけ等をした。流(ながし)の土さらひからコンクリート出しをした。家へ来てうら取りの手伝ひ。

*1:根岸いく。1940年(昭和15)8月〜1941年(昭和16)3月勤務。


九月十二日 木曜 曇
起床:四時二十分
就寝:二十時五十分
登校:六時三十分
下校:十八時三十分
 サカイ先生*1の話
今朝は朝当番なのである。支度をしてくわなどを持って山下君の家へ行って学校に行って掃除をした。一時読方夕立雲をした。二時国史江戸幕府の衰運三時綴方自由四時農業実習藁麦の作切り。五時草むしり。午後サカイ先生の講演があった。約三時間吉田松陰先生の事について為になる話。

*1:日本農士学校教授酒井利晴。


九月十三日 金曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時五十分
登校:七時二十分
下校:十六時二十分
 松の皮むき。
今朝は何時もより少し早かった。途中で山下君等と一しょに行った。士規七則*1を写した。一時修身青少年学徒二賜ハリタル勅語。二時読方漢字練習。三時図画此の前の仕上げ。四時体操国民体操。した。五時地理。天気。気候の所。六時武道をした。家へ来て松の皮むきをした。子守りなどした。

*1:士規七則は1854年(安政2)、野山獄に投獄されていた吉田松陰が従兄弟の玉木彦助の15歳の元服式に贈ったもの。「………一、凡生れて人と為る、宜しく人の禽獣に異なる所以を知るべし。蓋し人五倫有り、而して君臣父子を最大と為す。故に人の人たる所以は忠孝を本と為す。一、凡皇国に生れては、宜しく吾が宇内に尊き所以を知るべし。蓋し皇朝は万葉一統にして、邦国の士夫は禄位を世襲す。人君は民を養ひて以て祖業を続き、臣民は君に忠にして、以て父の志を継ぐ。君臣一体、忠孝一致は、唯吾が国を然りと為す。一、士道は義より大なるは莫し。義は勇に因りて行はれ、勇は義に因りて長ず。一、士の行は質実欺かざるを以て要と為し、巧詐過を交るを以て恥と為す。光明正大、皆是に因りて出づ。一、人古今に通ぜず、聖賢を師とせずば則ち鄙夫のみ。読書尚友は君子の事なり。一、徳を成し材を達するには、師恩友益多きに居る。故に君子は交友を慎む。一、死して而して後に已むの四字は、言簡にして義広し。堅忍果決、確乎として抜くべからざる者、是を舍きて術無きなり。右士規七則は、約して三端となす。曰く立志、以て万事の源と為す。擇交、以て仁義の行を輔く。読書、以て聖賢の訓を稽ふ。士苟も此に得る有らば、亦以て成人と為す可し。」


九月十四日 土曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時五十分
登校:七時十分
下校:十三時十分
 村田福次さんの帰くわん*1
四人で大通りを通って学校に行った。今朝は酒井先生に手紙をたのまれた。一時算術珠算をした。二時読方夕立雲。三時体操国民体操した。合同訓練があった。家へ来てから停車場に行き村田福次さんの帰くわんをむかえた。松の皮むき

*1:村田福次。1938年(昭和13)9月3日応召。


九月十五日 日曜 晴
起床:四時十分
就寝:二十時五十分
登校:
下校:
 山の木切り
今日は日曜日なので父と耕地に草刈りに行った。草があったので早かった。朝食して祖父。父子と三人で山に木を切りに行った。木を切るのは面白い。昼食をして車へめんを持ちに行った。二十五本持って来た。それから鎌形の水車に行った。来て子守りをしたり車の後押しに行った。


九月十六日 月曜 曇
起床:五時十分
就寝:二十時五十分
登校:七時十分
下校:十八時十分
 農業当番
支度も出来たので山下君等の家へ行った。皆早かったので早く学校に行けた。一時修身朋友。二時自習。三時農業実習玉蜀黍かき。四時ズックの配給。守と隆次に。五時紹介所の話。農業当番なのである玉蜀黍の皮むきをしたり収納倉に取りこんだ。

午後2時より大蔵部落常会開催(戸数84戸中82名出席。議題:玄米移動禁止令に関する件。大麦・裸麦供出に関する件。小麦扱に関する件。国民貯蓄奨励実践に関する件。暴利取締令に就て。蚕繭処理及蚕種の統制に関する件)。


九月十七日 火曜 曇
起床:五時
就寝:二十一時二十分
登校:七時十分
下校:十五時四十分
 桑つみ
曇って居たので雨が降るかと思ったが傘を持たづに行った。杉山先生や宮島先生は来なかった。一時校長先生の話があった。二時読方の漢字練習。三時書方清書。四時算術P34正方形等。服部先生の指導。砂利はこびをした二回。家へ来て子守り松の皮むき。桑つみ等しました。


九月十八日 水曜 雨晴
起床:四時六十分
就寝:二十一時十分
登校:七時四十分
下校:十五時二十分
 桑つみ。
夕べから降り続いた雨が降って居た。ともすると南洋に颱風が発生して来るのかと思った。一時算術珠算をした。二時地理。三時職業紹介所から来た人の話を聞いた。四時理科。燃料。五時唱歌国民進軍歌。家へ来て桑つみに行った。松の皮むきをした。


九月十九日 木曜 雨
起床:五時
就寝:二十時五十分
登校:七時二十分
下校:十四時三十分
 防空標語かき
昨日の夕方は良く晴れて夜になるとさえた月が出た。が今朝は雨が降って居た。下道を通って学校に行った。一時読方地震の所。二時国史尊王論。三時読方一時の続き。四時農業実習。玉蜀黍もぎ。防空標語をかいた。一、大空を護る銃後の臣強し。等をかいた。家へ来て松の皮むき。


九月二十日 金曜 晴
起床:五時十分
就寝:
登校:七時二十分
下校:
 松の皮むき
今日は天気になりそうであった。月田橋を通って行った。学校に行くとじきに始まった。一時自習。読方。二時、自習読方(教育研究の為)。三時修身朋友の所。四時体操横隊行進のならい。五時宮島先生が本を読んだ。帰りに川こしをして家へ来た。蚕の桑くれ。松の皮むき等をした。


九月二十一日 土曜 晴
起床:五時
就寝:二十時五十分
登校:七時十分
下校:十四時十分
 戦士者の墓参。
今朝は早かった。蚕に桑をくれたりして支度をして川こしで行った。一時算術。P34(4)をした。二時修身。朋友の所。三時読方。二十一指針の続き。掃除をして校庭に並んで校長先生の話。戦死者の墓参りをした。帰ってから桑くれ、松の皮むきをした。


九月二十二日 日曜 晴
起床:五時
就寝:二十時五十分
登校:
下校:
 桑摘み
早く起きて蚕に桑をくれた。そしてすぐ祖母さんと畠に桑つみに行った。松の皮むきをした。昼食して休み皮むき。柴田藤五郎さんの桑を買い摘んだ。二十三貫弱位。桑くれ等した。日曜日 昨日彼岸


九月二十三日 月曜 晴
起床:五時二十分
就寝:二十時四十分
登校:
下校:
 秋季皇霊祭
早く起きたが腹が痛かったのですぐ寝た。起きてからだんだん良くなった。松の皮むきや蚕に桑くれをした。昼前は遊んでしまった。昼食して休んで畠へ桑摘みに行った。今日は秋季皇霊祭。明日は学校


九月二十四日 火曜 曇
起床:五時
就寝:二十時四十分
登校:六時五十分
下校:十二時十分
 蚕上げ
今朝は自分の組では四人朝当番である。早く支度をして学校に行き掃除をした。一時読方日本の風土。二時修身恭倹の所。三時算術P34四辺形。蚕上げなのでこれだけでひまをもらって来た。をけやの家で来てくれた。


九月二十五日 水曜 晴
起床:五時二十分
就寝:二十時四十分
登校:七時十分
下校:十六時二十分
 大掃除である。
支度をして居ると学校の蓄音機が鳴って居た。いそいで行くと未だ早かった。銭をあつめるのである。始まる前に集めた。一時修身。二時地理動物の分布。三時書方。四時理科をした。合同体操。五時大掃除をするのである。大掃除をして先生の話。銭を先生にやった。


九月二十六日 木曜 晴
起床:五時十分
就寝:二十時五十分
登校:七時13?分
下校:十八時十分
 農業当番
今日は鎌を持って居くのである。葉書を入れた。学校に行って機械体操をした。朝礼をした。体操二回した。一時修身学門*1二時読方日本の風土。三時国史尊王論をした。四時農実。玉蜀黍のカラ切り。五時続きをした。農業当番である。庭の掃除。堆肥の積かへ等をした。さつまをもらってくった(学校)

*1:学問。


九月二十七日 金曜 晴
起床:五時
就寝:二十時五十分
登校:七時
下校:十二時二十分
 浦和の先生に見てもらった。
今日は父が大宮の競馬*1へ行くので早く起きた。学校に行って窓を開けた。サイレンが鳴ったが朝礼はなかった。一時読方の自習。次に朝礼である。浦和から来た先生は駒田先生と言ふ人。二時読方十和田湖の養漁。三時先生方に勉強の仕方を見てもらう。行進をして家へ来て麺を持ちに行った。

*1:二十六日から四日間、大宮競馬場で鍛錬馬競争が行われた。


九月二十八日 土曜 晴
起床:五時二十分
就寝:二十時四十分
登校:七時二十分
下校:十三時二十分
 航空日である。
父は帰って来なかった。支度をしてまきを自転車に乗って行った。一時は朝礼の為時間は幾分もなかった。今日は航空日である。二時読方十和田湖の養漁。三時体操下田先生の指導でじゃり運びをして家へ来た。畠の草むしりをした。いろいろした。

大蔵区常会開催。七郷小学校で七郷村防空実習会開催。


九月二十九日 日曜 曇
起床:六時二十分
就寝:十九時十分
登校:
下校:
 松の木だし
祖父と山に行った。頭がいたかった。


九月三十日 月曜 曇
起床:六時十分
就寝:二十時十分
登校:七時十分
下校:
 週番である。
今日から週番である。早く学校に行き先生の話をした。朝礼をしなかった。一時修身。日独伊同盟の話。二時算術。始まる前に校長先生の話を聞いた。三時農業。四時理科。五時手工正図*1をして日誌をつけて家へ来た。

*1:製図。

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