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第6巻【近世・近代・現代編】- 第6章:くらし

第3節:日記

冨岡寅吉日記

昭和15年(1940)3月


三月一日 金曜 晴
起床:六時五十分
就寝:二十時四十分
登校:八時十分
下校:十四時二十分
 大掃除。子守り。
今朝は神社参拝であった。そしてそうじをして学校に行った。新聞が来た。雪が少し降ったかボールをした。算術は円周をした。故郷の花をした。四時間して大掃除なので旧校舎をして家へ来て子守りをした。もちつきであった。


三月二日 土曜 晴
起床:六時四十分
就寝:二十時五十分
登校:八時二十分
下校:十二時
 使ひ
学校に行ってボールをして居た。鐘が鳴ったので庭に集まった。兵隊送りなのであった。サイレンがナルまでボールをした。体操をした。国民体操をして木をはこんだ。家へ来ていねと水車へ面をもちに行って来た。子守りをした。


三月三日 日曜 晴
起床:六時三十分
就寝:二十時四十分
登校:
下校:
 学校に行った
今日は日曜でありせつくである。みやを子守った。下して魚つきに行ったかつかなかった。早昼飯で三、四、人で学校に行ってまん才を見た。ろうきょくを一番初にした*1。後ってから家へ来て遊びに行った。夕方まで遊んで家へ来た。

*1:菅谷村青年団、小学校で「帰還兵と戦没勇士遺家族慰安浪曲会」開催。


三月四日 月曜 晴
起床:六時二十分
就寝:二十時五十分
登校:八時
下校:十四時二十分
 魚突き [欄外]修身考査
今朝は朝当番なので早く支度をして学校に行って机を入れた。教室をぞうきんがけした。始まった。そして教室そうじを一同で始めた。修身の考査をした。読方をして理科 後はないので家へ来た。川へ行って魚を突いた。家へ来て遊だ。


三月五日 火曜 晴
起床:六時二十分
就寝:二十時五十分
登校:七時五十分
下校:十五時二十分
 つぶてうち。入営
 [欄外]算術考査
今朝は藤縄利治君が入営*1するので河原まで送くって学校に行った。ボールをした。第一時に算術の考査をした。むづかしくなかった。読方をした。地理を二時間した。手工をして家へ来た。田へ行ってつぶてぶちをした。

*1:大蔵藤縄利治満州国坂田部隊応召。


三月六日 水曜 曇
起床:六時四十分
就寝:二十時五十分
登校:八時二十分
下校:十五時二十分
 手伝をした
村田君は少し遅そかった。皆集まったので学校に向かった。とても早かったボールをした。先生が居ない為、下田先生*1が土と兵隊の本を読んだ。後は自習をした。体操の時に河原へ行った。図画をして家へ来た。そして田へ行ってつぶてぶちをした。

*1:下田茂寿。1939年(昭和14)3月〜1944年(昭和19)3月勤務。


三月七日 木曜 晴
起床:六時二十分
就寝:二十時四十分
登校:八時十分
下校:十五時二十分
 実習当番でぞうり
 [欄外]理科考査
朝起きて見ると空は曇って居た。そして学校に行った。そしてボールをした。一時間目に修身で話をした。二時間目に読方をした。農業をして昼を喰った。理科の考査をした。農業実習当番をして家に来て田へ行った


三月八日 金曜 曇
起床:六時二十分
就寝:二十時四十分
登校:八時二十分
下校:十四時三十分
 いろいろの考査
 [欄外]地理書方綴方図画の考査
今朝も曇りって居た。そしてだんだん曇ってしまった。学校に行った。ボールをした。一時間目に地理の考査をした。読方。算術で皇*1を書いた。書方、綴方、図画の考査を仕上げた。

*1:星か。


三月九日 土曜 雨
起床:六時十分
就寝:二十時四十分
登校:八時二十分
下校:十二時二十分
 初雷 [国史考査]
新聞を見ると竹田宮のおかくれになったことがしるしてあった。学校に行って国史をしらべた。雨がしとしと降って居る。算術をした。国史の考査をした。国史をした。家へ来て草履を作くった。後は夕方まで子守りをした。初雷がなった。


三月十日 日曜 晴
起床:六時三十分
就寝:二十時五十分
登校:
下校:
陸軍記念日 大遊び 陸軍記念日
今日は日曜だったので少し遅く起きた。そして子守りをした。よく寝た。昼まで子守りをした。陸軍記念日であった。国旗を建てた。昼からは遊んだ。明日は月曜日で草り作りがある。夕方まで遊んで家へ来た。


三月十一日 月曜 晴
起床:六時二十分
就寝:二十時五十分
登校:八時十分
下校:十四時三十分
 草り作り
朝起きて見ると少し曇って居た。藁をすぐって*1居ると山下君が新聞をもって来た。学校に行って藁をしまって置いた。第二時に読方の考査をした。理科をして、第四時から草り作りなので旧校舎て作くった。家へ来てから草つみに行って一(ひとつ)みかい*2つんで来た。

*1:藁すぐり…稲藁の根本についている葉を取り除く作業。
*2:メカイ。四つ目の籠として代表的なもの。


三月十二日 火曜 晴
起床:六時十分
就寝:二十時四十分
登校:八時
下校:十四時四十分
 草つみ
守平と山下二郎君は朝当番であったので村田君と一しょに学校に向った。かなり早かった。行って見ると幾人も居なかった。外に出てボールをした。セイボウ*1に本をかりて読んだ。第一時算術とても面白かった。第二時読方これも面白い。第四時に体操の考査。第五時をして家へ来て草つみをした。

*1:富岡誠一。当時尋常科2年生。


三月十三日 水曜 晴
起床:六時三十分
就寝:二十時四十分
登校:八時十分
下校:十三時二十分
 入学者の体調検査
いつもより少し起きるのがおそかった。支度をして山下君の家へ行った。第一時の始まる前にボールをした。一時に、汪精衛の話をした。二時、国史戦国時代の話をした。三時もした。本年度入学者検査のため半日でしまって家へ来た。昼を喰って山下君兄弟と自分兄弟と草つみに行って一ぱいつんで来た。


三月十四日 木曜 曇晴
起床:六時三十分
就寝:二十時五十分
登校:八時
下校:十四時四十分
 下田先生に話を聞いた
今朝起きると夕べの雨の為庭はどっしりとしめって居た。支度をして皆と一しょに学校に向かった。今朝も早当に早かった。ボールをした。機械体操もした。第三時に下田先生が青年学校義務制の話をした。理科はおはったでなぜなぜ問どうをした。家へ来て草つみ。


三月十五日 金曜 晴
起床:六時二十分
就寝:二十時五十分
登校:八時
下校:十五時十分
 いろいろ
自転車屋に用があるので自転車に乗って行った。菅谷から学校まで中島君*1や松本君*2と一しょに行った。学校に行ってボールをした。機械体操もした。第一時算術をした。読方は二十一課をした。三時間で家へ来てまきわり、まきまるきをした。子守りもした。

*1:中島運竝。同級生。
*2:松本昭三。当時尋常科5年生。


三月十六日 土曜 晴
起床:六時三十分
就寝:二十時五十分
登校:八時二十分
下校:十三時
 や弓様*1へ行った
今日は少し起きるのがおそかった。支度をして清水君の家の方に行った。今日は灰を持って行った。学校に行ってボールをした。国史をした。三時間目は体操をした。家へ来ておぢいさんと、守と三人でや弓様へ行って来た。いろいろと見て廻はった。帰りに車を引いてきた。

*1:松山町(現・東松山市)の箭弓神社。


三月十七日 日曜 晴
起床:六時四十分
就寝:二十一時
登校:
下校:
 めじろをにがした。
今朝は日曜日だったので少し朝寝ぼうをしてしまった。一束まきをまるった。ねぎを取って来て自転車で松山の新井屋へ持って行った。さとうもかって来た。家へ来て子守りをした。昼を喰ってからも子守りをした。家へ来てめじろを逃してやった。子守りをした。以上


三月十八日 月曜 晴
起床:六時二十分
就寝:二十一時十分
登校:八時
下校:十五時四十分
 ロート目薬を買った
いつも山下二郎君は支度をするのがおそい。外へ来たので清水君の方へ行って一しょに行った。今日はボールかないので機械体操半頭棒などした。第一時修身であった。読方もした。第四時はいてふの木を植える穴をほった。唱歌の考査をして家へ帰りにロート目薬を買って来た。将軍沢へ籠を運ぱんした。


三月十九日 火曜 晴
起床:六時二十分
就寝:二十時五十分
登校:八時十分
下校:十四時四十分
 遠足の話
朝起きて鏡を見ると目の赤いのはまだなほらなかった。支度をして学校に行った。そして上下一心をてうこくして忠義孝行をほった。機械体操もした。遠足の話をした。明日は戦士者*1の墓参りである。四時間でそうじをして家へ来てくわ原のこひの土かけをした。

*1:戦死者。


三月二十日 水曜 晴
起床:六時三十分
就寝:二十時五十分
登校:八時
下校:十三時二十分
 本屋が二十二日くる。
今朝は少し起きるのがおそかった。支度をして山下君の家へ行って忠義孝行をほった。学校でほり上げた。一時間目算術をした。二時国史をした。三時珠算をした。そして今日は戦死者の墓参りなので庭に集って出かけて墓へ来てお参りして家へ来て車へ面を持ちに行って来た。

菅谷村出身戦死者の慰霊祭挙行。


三月二十一日 木曜 晴
起床:六時十分
就寝:二十時五十分
登校:
下校:
 種播き ヰレイ祭
今日は春季皇霊祭である。朝めし前に杉の木の皮をむいた。朝めしを喰って父と馬小屋のこいとりをした。畠の整地などした。家へ来て草花の種まをまいた。昼を喰ってヰレイ祭があるので式に行って来て、子守りをしたり、遊んだりした。明日、本屋がくる。


三月二十二日 金曜 晴
起床:六時二十分
就寝:二十時四十分
登校:八時二十分
下校:十五時十分
 漢字でかいた
朝起喜天見流止、空半久毛闘天以多。之多久乎之天山下君乃家仁行聞多。学校仁行闘天加良乎加須止言闘多。今日半以闘毛與利風加乎々久不以多。第一時仁算術乎之多。二時読方一番之萬以乎之多。三時地理面白久多女仁奈多。四時毛之多。五時教科書乎加闘多。家江喜天本乎見多。伊呂伊呂*1

*1:「朝起きてみると、空はくもっていた。支度をして山下君の家に行った。学校に行ってから本を貸すと言った。今日はいつもより風がおおく吹いた。第一時に算術をした。二時読方一番のまいをした。三時地理面白くためになった。四時もした。五時教科書を買った。家へ来て本を見た。いろいろ」


三月二十三日 土曜 晴
起床:六時十分 
就寝:二十時五十分 
登校:七時三十分 
下校:十四時二十分
 行軍
今日は行軍なのである。だから早く起きて支度をした。種を播いた所に水をくれて学校に向かった。大分早かった。出発して太郎丸を通り、伊古に出て和泉を通った。久保先生*1の家もあった。大沼公園て昼をたべて家へ来た。広野を通った。家へ来て子守りをした。いろいろした。

*1:久保龍雄。1926年(大正15)3月〜1938年(昭和13)3月勤務。


三月二十四日 日曜 晴
起床:六時二十分
就寝:二十時二十分
登校:
下校:
 杉ノ木の皮むき。
今朝は少し起きるのがおそかった。日曜日なのである。朝食後、支度をして籠をしょって将軍沢の大工さんの家へ行って来た。家へ来て子守りをした。又下して子守った。午後守と草つみに行った。帰って来てすぎの木の皮むきをした。夕方子守り。


三月二十五日 月曜 晴
起床:六時二十分
就寝:二十時四十分
登校:八時十分
下校:十五時四十分
 農業実習でさくきり。
今朝もいつものやうに支度をした、温床に水をくれた。一同が来たので学校に向った。途中で忍田、吉沢、両君が鍬を持って行ったので家へ採りに来た。第一時に修身をした。二時国史で三十課までをはした。五時には農業実習て西の麦畠のさくきりをした。家へ来て子守り。大澤君*1が飛行機ヲトバス。

*1:大澤知助。当時尋常科6年生。


三月二十六日 火曜 晴
起床:六時三十分
就寝:二十時五十分
登校:八時二十分
下校:十四時十分
 実習当番であった
今日も昨日のやうにしづかな日になりそうな模様てあった。温床に水をくれて山下君の家に行ったら皆がすぐ来た。下の学校橋を通って行った。いつもと同じ位である。いてふに水をくれた。第一時地理、読方。地理、三時間で学校はしまいであった 家へ来てふるっこみ。


三月二十七日 水曜 晴
起床:六時二十分
就寝:二十時五十分
登校:八時十分
下校:十二時十分
 考査をかへした。
朝起きて戸をあけた。杉の木の皮むきをした。学校に向った。清水君の家へ行ってそれから行った。早かった。いてふに水を四はいくれた。第一時考査をかへした。二時地理をした。あとは大そうでをした。家へ来て鎌形の水車に使に行って来て子守り。


三月二十八日 木曜 晴
起床:六時二十分
就寝:二十時四十分
登校:八時十分
下校:十二時二十分
 式のならい。
 [欄外]大風
今朝は杉の皮をむいた。昨日のをむいてしまった。支度をして温床に水をくれた。山下君等が集ったので学校に行った。今日は高等一年の一番最後の日である。教室で先生に話をきいた。式もした。家へ来て杉の皮むき。子守りなどした。明日は卒業式。


三月二十九日 金曜 晴
起床:六時十分
就寝:二十時60分
登校:八時
下校:十三時四十分
 卒業式
 [欄外]一等賞
今日は目出たい卒業式なのである。式の支度をして水をくれて、ふたをしないで行った。一時間も遊んでから、サイレンがなって教室に入った。卒業生から始って自分等の番になって、村田君*1がそう代に出た。自分も出た。一等賞であった。家へ来てもち草をつんだ。子守りもした。

*1:村田久雄。同級生。


三月三十日 土曜 晴
起床:六時三十分
就寝:二十時五十分
登校:
下校:
 魚突き
今日からしけん休みてある。朝めしを食って支度をして五明に使に行って来た。そして家へ来てくりの皮むきをした。とてもしづかな日であたゝたかった。午後、川へ魚つきに行って四くし突いて来た。田へも行った。


三月三十一日 日曜 曇晴
起床:六時十分
就寝:二十時五十分
登校:
下校:
寝て居ると「早く起きろ」と言はれて飛び起きた。新聞を見ると先生の異動がのって居た。建ちゃんや三郎さん*1を見送くった。家へ来て本をかりた。川へ行って魚を突いた。午後子守りをした。二回続けて子守った。夕方もした。いろいろ。

*1:富岡健治。斎藤三郎。

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