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第6巻【近世・近代・現代編】- 第6章:くらし

第2節:回顧録・作文

権田本市『吾が「人生の想い出」』

第三部 青年時代

軍隊生活

 愈々軍隊の訓練を始まりから思い出した順に説明する事にする。とにかく五十有余年前の事で話も大分前後すると思うが了解を願っておきたい。
 先ず一日が終ると夕食。その後、週番下士官の集合がかかる。その時明日の訓練の編成及び工場などに行く者等が通達されるのである。此のようにして第一期までの訓練が行なわれる訳であるが、第一期と云うのは三島では、一月に入隊し、四月に入って富士演習場に行って来る間の三ヶ月間を云ったように思う。演習場では実弾射撃も行なわれ、初めて一人前の兵士となる。
 次に一期が終ると色々の部所入りもきめられたと思う。軍隊だって裁縫工場もあれば靴工場、鉄工場、医務室、炊事場、連隊本部などなど。一寸思い出せない程数多くある。男世帯で全部やらねばならないのである。一寸考えると、軍隊とは訓練して戦闘に備えるだけと思うだろうが、軍隊は本科の直接戦闘要員と各部所の軍人が一体となって初めて其の目的を達成出来る訳である。此のような事はここ軍隊ばかりか今の時世にも通じ得る事ではないだろうか。

権田本市『吾が「人生の思い出」』 1989年(平成1)8月発行 28頁〜29頁
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