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第6巻【近世・近代・現代編】- 第6章:くらし

第2節:回顧録・作文

大塚基氏編『ある夏休みのことです』

9.花火 とく

 私は、おかあさんと、けんちゃんと、きよさんと、おひろさんとで花火を見にいきました。おかあさんが、「ちちばし*1行く。」とゆったら、おひろ さんが、「ちちばしのほが*2良く見えるだべ。」とゆった。「おねんだいのひさいさんの裏の畑でも見えるだんべー。」と私はゆった*3。私ときよさんとけ んちゃんでばらばらかけていって、上あがったら良く見えるので、私は声をはりあげて、「良くみえるよ。」とゆった。そしてあがって見ていたら、あきよちゃ んと、としこちゃんがかけてきて、「そこでも良くみえる。」とゆった。私は、「良く見えるよ。」とゆった。
 あきよちゃんが、「そこにゆかたを着ているのはだれ。」とゆうから、私は、「おれと。」ゆったら、「なんだとくちゃんか。」とあきよちゃんはゆった。私は、「あきよちゃんちちばしで見え た。」とゆったら、あきよちゃんが、「良くみえるよ。な、とこちゃん。」とゆった。おかあさんが、「あきよちゃん、ちちばし人いた。」ゆったら、としこ ちゃんが、「いるけど男ばかり。」とゆった。
 土手からとしこちゃんとあきよちゃんが、ぎゃぎゃゆいながら駆けて行った。
 そしたらおひ ろさんが、「ああゆう子*4はぎゃぎゃ言いながらゆくん*5がおもしれんだんべ。」とゆった。そしたらもこから*6まさいちゃんとやっちゃんが来た。そし て土手あがって、まさいちゃんが、「やっちゃん、だまってろ、ひでこんち*7にきたから。」とゆうと、やっちゃんが、「うん。」とゆった。そしてひでこ ちゃんが、「まさいちゃんなんかきなかった。」とゆうのが終わるころ「ふふふ」と笑ってしまいました。私は、「まさいちゃん笑っちゃだめだな*8。」と言 うと、「そんだって*9おかしんだもの」
 松と松の間から丸いものが出てきたと思うとぱんとはねる。みんなが、「今のはきれいだったな。」と、「わあ」とかんせいをあげる。ちちばしの方からも「わあ」と言うかんせいがこっちの方まで聞こえる。
  それから家に帰ってきたのが九時です。それから寝たけどなかなか眠れない。十時もしている*10。母や父や姉は、ぐぐといびきをかいて寝ている。私はまだ 眠れない。そして花火が終わったとみえて、うちの前の県道を熊谷の方からバスやオートバイが帰ってきてうるさくて眠れない。
 でもそれからよく眠れた。

*1:ちちばし…場所の名
*2:ほが…ほうが
*3:ゆった…言った
*4:ああゆう子…あのような子
*5:ゆくん…行くのが
*6:もこから…向こうから
*7:ひでこんち…ひでこちゃん
*8:だめだな…だめだよ
*9:そんだって…そういっても
*10:もしている…にもなっている

大塚基氏編『ある夏休みのことです』 1994年(平成6)12月17日
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