第6巻【近世・近代・現代編】- 第5章:社会
自然保護
守ろう里山(さとやま)
ボランティアによる植樹が行われました。
昨年町では、将軍澤地内笛吹峠脇の土地(約3ha)を購入しました。このうち約65aに4月28日、県の住民共同緑化活動援助事業を活用し、エノキ、クヌギ、コナラ、山桜、ウツギの苗木を170本、約70名のボランティアの方々にご協力をいただき、以前のような雑木林を復元するため植樹を行いました。当日の様子を写真で紹介します。今後とも、町では里山の保全を進めていきます。
里山とは
今のところ統一された定義はなく、言葉の定義は必ずしも確定していません。しかし一般的に、都市域と原生的自然との中間に位置し、さまざまな人間の働きかけを通じて環境が形成されてきた地域。集落をとりまく、人の手が加えられた雑木林(二次林)と、それらと混在する農地、ため池、草原などで構成される地域を指します。
里山のいま
里山は、日本人の心のふるさと、心の景色といわれています。しかし、生活様式の変化から、里山は放置されるようになり、その景観、生態系は変化 しつつあり、今ではほとんどの所でその呈を成していません。雑木林から得ていた薪炭や落ち葉、枝・草などは不要となり、林に手は入らず、ため池や小川も使われなくなってしまいました。また、棚田や人家まわりの畑もいつの間にか放置される状態です。
なぜ里山を守るの?
人と自然が調和していた時代の里山は、森や川、ため池などが里山特有の自然環境を成していました。森をはじめとする里山の環境は、農・林業などの人が営む生産活動の中で統合されて、それぞれ十分な働きをしていました。里山の自然のように、長年にわたって人と調和し、折り合ってきた場合、自然もまた人手に依存していくという関係を求めます。人が自然を必要とし、自然もまた人を必要とする、そんな関係のもとで里山は成り立ってきました。里山の荒廃は、このような関係が切断されたことにより起こります。私たちは経済発展や都市の拡大を進める中で、里山の荒廃や破壊を進めてきました。これにより、都市が必要とする里山の働きができない状態になっているのです。私たちは現在、里山に多くの機能を期待しようとしています。昔からの働 きに加えて、新しい働きをも入れ込みたいと考えているのです。
里山の新たな役割街地や住宅地が里山に近接するよう
「環境としての重要性」
かつての里山は、農・林業を中心に維持されてきました。しかし働き手のほとんどが、商工業に従事するようになると、農地や林の管理に手が回らなくなり、放置された所が多くなりました。逆に都市は拡大し、市になると、里山は良好な生活環境を維持するためのものとして、その意義は飛躍的に増大しました。里山は、昔からの私的な土地利用の時代から「都市に物質的、精神的な潤いを与える空間」として評価される時代となってきたわけです。
「新たな位置づけ」
里山が多くの人々から注目されるようになると、里山に対する評価もまた変化してきます。今までに考えられてきたような里山の働き(山崩れや洪水の防止、景観の維持、気象の緩和、水の浄化、CO2の固定など)はもとより、他に多くの価値を求めるようになります。それまで遠くから眺めるだけであった里山を身近に感じることにより、さまざまな利用の可能性を見出したり、自然の動きを発見したりすることができるようになったりと、従来考えられなかった里山の価値を、新たに付け加えていきます。
「里山づくり」
生産のために里山が利用されていた時代は、里山から産出される「物」の利用が対象でした。しかし現代では、里山の利用は「場」を対象にする形をとるようになります。「里山という場」をどう利用するか、それが新たな里山利用の内容になります。これが「里山づくり」です。「里山づくり」とは、私たちが里山に新たな役割・価値を見出し、里山を保全、活用して行くことです。里山の新しい利用としては次のようなものが主になるでしょう。
『広報嵐山』123号 2002年(平成14)6月1日
●健康づくりや癒しの場としての利用
●環境教育や学習の場としての利用
●人々の交流や社会福祉の場としての利用
●まちづくり活動を生み出す基盤
町では里山づくり(里山の保全)をキーワードにまちづくりを推進していきたいと考えています。