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第6巻【近世・近代・現代編】- 第4章:教育・学校

第3節:中学校・高等学校

菅谷中学校

縣下有数の新制中學校舎落成近し

 二六〇万円の巨費を投じて昨年十一月起工した菅谷新制中學校舎は七ケ月間の日子を費して愈々落成の運びをみるに至つた。この校舎が出來上れば新制中學校舎としては縣下でも屈指なものとなり、その偉容はわが村の誇りとなることであろう。
 この校舎が優秀なる点は、縣の設計者が称讃した様に、骨組みの材料が特別なものを使用してあることで、柱を筋交ひに組み、組合せ点はすべてクランプを用いて、堅固を極め、地震や暴風雨からの災害を防いでいる。トラス張り(合成張り)は平行トラスと共に更に強固なものにしてゐる。耐火設備には仕切りにプラトン、天井にプラスター・ボードを用ゐてゐる。屋根瓦は三州焼の一級品を使つてゐるがこれは小學校舎の屋根瓦と一見似ているが、より強固なもので縣下でもこの種瓦を使用している所は殆どないであろうし、東京でも僅に最近出來上つた法務府ぐらいのものである。床板はすべて楢のフローリングを以て作り、室の仕切りには、この附近では使われない三分のベニヤ板で張られ各教室には全部電燈がつくことになる。又各教室の廊下側に壁があるのは黒板の字が光線の具合で光るのを防ぐと共に、廊下を通る人に氣を奪われないためのもので、これ亦最新の設備である。以上の観点よりしてこの校舎が完成の暁は縣下稀にみる立派なものとなるであろうと思われる。
 〔吉野建築委員談〕
 予定の竣工期日より遅くれたことは誠に申訳ないと思つております。江部組が設計の割には比較的安い建築費で請負つて努力してゐる点は認めてもいいのではないかと思ひます。この学校が出來上つた場合には縣下に於ても有数の學校となると思います。
 〔江部組社長高橋重藏氏談〕
 完成期日が大変おくれて村民の皆様方に対し誠に申訳がないと思つております。私としましては初志の希望をこの学校に生かして最後まで努力を続けるつもりでおります。学校が完成した時に村の皆様方からいい學校が出來てよかつたと云われる様に誠意を以てやる覚悟です。尚私の方で建築の際苦心しましたことは設計図面を短時日の間しか見なかつた為予想以上に木材を使用したこと、更に木材の等級を厳密に検査されたことであります。

『菅谷村報道』2号 1950年(昭和25)5月20日
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