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第6巻【近世・近代・現代編】- 第3章:産業・観光

第3節:農耕・園芸

農村経済更生運動

更生事例

更生七郷村の礎石吉田組合

指導員 千野幸三郎 

 「吉田とは誰か名付けけむ昔より人も吉田や稻も吉田や」と誰か歌ふともなく歌はれた吉田。本年(1937)二月十一日の紀元節の佳辰に、その吉田に産れた吉田第七農事実行組合は表彰せられた。流石に更生七郷村の一礎石たるの実をあげてゐる。

一、組合設立の動機

 本組合の吉田は山地多く、部落其の内に點在し、区民は穀作、養蚕を主とせる。農業経営にて比較的農耕に惠まれ貧富の懸隔も尠なく、所謂中産農家の状態であった。然し大正八、九年(1919、1920)の好景気に誘はれ淳朴なる部落の氣風は俄かに投機的に流れ、奢侈遊惰の風全区に流れ各戸の経済は膨脹したる所、忽ち経済界の変動に会ひ生活の不安を感ずるに至り。茲に有志相謀りて本組合を組織して、之れが改善と生活の安定を期することとせるのである。

二、組合の現状

1.組合長   藤野菊次郎
2.組合員数  三十二名
3.組合区域  七郷村大字吉田中谷地
4.事務所   吉田公会堂
5.基本財産  金七百貮拾五円

三、組合の事業

1.生産物品評会
 地主会より産業獎のため、毎年五十円づつの寄附あるを請入れ賞品費となし、生産の統制品質の改良等に努め居ること。
2.共同作業塲設置
 一馬力半の発動機を利用して組合員全部の精米、l麦をなし、又畜力脱穀機を設置して、畜力の利用と勞力の節約を図ること。
3.種豚場の設置
 村農會の斡旋により、農林省種畜場より牡牝二頭を拂下げ、組合員の便宜を図り居ること。
4.共同育雛所設置
 愛知縣より初生雛を購入し、上級農会技術員の指導監督を受けつつ育雛をなし、六十日雛を各組合に分譲せり。
5.共同事業
 一、必需品の共同購入販賣
 二、共同利用設備の設置
 三、共同作業

四、組合将来の経営計画方針

(一)米麦作の増産計画

年次    水稲反当(最高・最低) 大麦反当(最高・最低) 小麦反当(最高・最低)
昭和九年度 (三石一斗、二石一斗) (五石、四石)     (三石六斗、三石)
仝十年度  (三石二斗、二石八斗)  (五石二斗、四石二斗) (四石、三石二斗)
仝十一年度 (四石、二石八斗)    (五石三斗、五石)   (四石、三石二斗)
  全表は過去の統計に立脚し、本年並に将来其の増殖を図るものである。

(二)畜産の増殖

1.耕牛馬 農家一戸につき  一頭
2.豚     仝      三頭
3.鶏     仝     五〇羽
4.兎     仝     一〇疋

五、組合是(くみあいぜ)

1.祝祭日には必ず国旗を掲揚すること。
2.農業教育の振興普及を図り農業組織の完成を期すること。
3.敬神崇祖の念を一層高めること。
4.公休日を必ず守ること。
5.時間の確守早起励行に努力すること。
 上記組合是設定し、神に誓て之れか励行に組合員全部努力するを以て本組合部落の風紀一段と、他と趣を異にするのである。

『更生埼玉』10号 1937年(昭和12)4月
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