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第6巻【近世・近代・現代編】- 第3章:産業・観光

第1節:景勝・名所

出世街道・花街道 —— 勝手に作ったロマンチックコースです ——

 嵐山町の新しい発見はないかと取材を続けていくうちに、町内のあちこちに健康や財産、勝運などに関係するような場所を訪ねることができました。
 そこで報道委員会では、それらの場所を勝手に組み合わせ、ハイキングコースを作ってみました。名付けて「出世街道・花街道」。町内各所で桜も開花する季節です。このコースにひとつ挑戦してみませんか。

ヘルシーウォークで成功への第一歩を

出世街道・花街道ハイキング第1コース|地図

 「あな涼し浮世のあかをぬぎすてて西へ行く身はもとのもくあみ」 スタート地点は、江戸時代末期の狂歌師元杢網(もとのもくあみ)夫妻の墓です。杉山の関越自動車道にほど近いこの場所で、まずゼロからの出発を心がけてください。今持っている地位も名誉もうさも悲しみもとりあえず忘れましょう。〔すぐそばの湿地には花菖蒲(しょうぶ)が咲いていれば…〕さあ、今後の人生のの旅に出ましょう。
 関越道をくぐり、左方へ三キロほど行くと越畑の寺(ほうやくじ)に着きます。安産薬師といわれて栄えたこの薬師様で、まず何よりの宝、健康を祈りましょう。〔みごとなクマ笹など、この辺の薬草は特に効き目がありそうです〕
 健康の次はお金。これより五百メートルほど南に寺(きんせんじ)があります。春は沼のそばの桜が白い花びらを水面に散らし、秋には樹齢二百五十年の大イチョウが、その黄金色の小判のような葉を散り敷きます。〔お金が泉のようにわく、なんだか金運がつくような気がしませんか〕 同じ道を戻り次は八宮神社(やみやじんじゃ)です。ここのササラ獅子(しし)舞は県指定の無形文化財ですが、ここでは自らの今後の奮迅の活躍を誓います。承平年間(九三一年ころ)源経基(みなもとのつねもと)が戦勝祈願をしたといわれる神社ですから。〔目的に向かい奮闘努力、突撃するのみ〕  県道深谷嵐山線へ出ると七郷小学校があります。ここの桜はみごとです。しばし目を休めましょう。〔近くの山では四季折々の花、山ゆり・山つつじ・ギボシなどの花が目を楽しませてくれます〕 また県道を北へ約二キロ、右へ曲がり一・五キロほどで手白神社(てじろじんじゃ)に着きます。
 樹齢六百年という神木の杉は町指定の天然記念物。祭神は手白香姫(たしらかひめ)で、全国でも数少ない手の神様です。神社の左手奥に小さな洞があり、わき水があります。ひしゃくで手を洗い、手の病を治し、器用になるようお願いするとともに、仕事が一層うまくいくことを祈りましょう。〔さすが社殿の彫刻はみごと〕
 そして、吉田から勝田へ向い工業団地の中を抜けて約五キロ、また関越道のそばに出ます。それをくぐって玉ノ岡中学校のほうへ進み手前を左折。曲がって二百メートルくらいで右へ行き、階段を上ると杉山の薬師堂があります。お堂の天井には、元杢網の描いた墨絵の八方にらみの竜があり、今もなお目の悪い人たちの信仰をあつめています。手に続き、あらゆる方向に注意を払い、物をしっかり見る目の健康を祈りましょう。〔ここで竜門に登る誓いを立てる。なお眼鏡は外してお祈りを〕
 次は粕川(かすがわ)の土手に出て川島に向かいます。〔一面に敷きつめられた柴桜を見ながら…〕二・五キロくらいで橋を渡ります。ここが精進橋(しょうじんばし)。〔人生は辛抱がたいせつ。橋から見える市野川の土手には水仙が咲き並んでいるかも〕 地産団地の信号を左折し、川島自治会館の所の聞かず薬師〔耳の薬師様(本来は目の薬師様)。いろいろな情報を取捨選択する耳もたいせつ〕のわきを通り、鬼鎮神社(きじんじんじゃ)まで約一・五キロ。ここでは鬼も神様。金棒がたくさんあります。鬼に金棒、あなたの人生は大成功を収めることでしょう。
 ここで二十キロほどの第一コースは終わりです。更に元気のあるかたは、南のコースに挑戦してください。

次のコースへ向かってパワーアップを図る

出世街道・花街道ハイキング第2コース|地図

 鬼鎮神社から嵐山駅へ出ます。〔駅前に畠山重忠公の像があり、それを名馬三日月をかたどった池と、花壇が囲んでいたらすばらしいですね〕駅前通りを直進し菅谷神社(すがやじんじゃ)へ。手前の公園はすいれんが池一面に咲き、桜もみごと。〔早春に水仙、池には錦鯉(にしきごい)をと欲張って考える〕そこから国道二五四号バイパスへ出ます。ロマンス街道〔冬は葉ぼたん、秋はコスモスか?〕を眺めながら東へ七百メートルくらい歩き、信号を右折すると日本農士学校から名付けた学校橋*1へ出ます。ここで都幾川の土手に下りましょう。桜並木が約二キロ続いています。
「見渡せば春日の野辺に霞たち咲きにほへるは桜花かも」
 万葉集の中で詠まれている歌ですが、この春日の野辺を都幾の堤に変える日も近いことでしょう。桜並木を約一キロほど歩くと二瀬橋(ふたせばし)に出ます。雄大な比企丘陵の自然を満喫でき、心豊かになる所です。ここを左折して、農免道路を歌でも口ずさみながら歩きましょう。右に嵐山町総合運動公園を見て更に進み、嵐山カントリー内を通り抜け将軍沢へ出ます。二瀬から二キロちょっとでしょうか。ふるさと歩道でもあるハイキングコースを、緑に映える桜を眺めながら笛吹峠へ向います。約二キロ、四阿(あずまや)のある峠に出ます。古くは坂上田村麻呂や藤原利仁将軍の伝説の地であり、鎌倉街道としても有名です。〔ここで野外音楽会などすてきでしょうね〕
 ここからはその名も巡礼街道(じゅんれいかいどう)と呼ばれる山道を歩きます。〔鎌倉の天園コースを歩いているようです〕 木立の間からもれる日ざしを浴びながら、土のにおいを楽しんで一キロほど歩いたら右折。美しく整備された嵐山カントリーを右手に見てまた一キロ、町営の鎌形野球場を過ぎ、県道大野東松山線へ出ます。ここで左折、二百五十メートルほど行ったら右折し、朱塗りの欄干の班渓寺橋(はんけいじばし)を渡ります。
 班渓寺には、木曽義仲の妻といわれる山吹姫の墓と伝えられる五輪塔があります。近道をして鎌形八幡神社へ向かう途中、梅の古木が庭の隅に咲く、わらぶき屋根の民家があります。のどかな田舎にタイムスリップして、鳥のさえずりなどを耳にしながら心を休めましょう。鎌形八幡神社がすぐに見えます。
 ここは木曽義仲産湯の清水で有名ですが、坂上田村麻呂将軍が筑紫の宇佐八幡宮を勧請建立したといわれ、また八幡太郎源義家も戦勝祈願をしたといわれています。家康以後、徳川将軍代々の御朱印状も現存している大きな神社です。
 ここから鎌形小学校の横を通る道は、ドウダンツツジとつわぶきが並んでいます。小規模校である鎌形小学校では、独特な教育が実践されているということですが、日赤の白い社屋を利用して講堂や音楽堂、図書室にしているのも何か新鮮です。県道玉川熊谷線に出て約五百メートルで左折、嵐山渓谷に向います。
 渓谷の自然は、に似ているといわれるだけにみごとです。春は梅・桜、夏は緑、秋は紅葉と渓谷の流れとが調和して、自然の美しさを堪能(たんのう)することができるでしょう。渓流沿いに少し困難な道を抜けて塩沢冠水橋(しおさわかんすいきょう)へ出ると、ここの眺めもまた思わず声を出したいほど。更にきついコースになりますが、これから大平山に登ります。
 近道と書かれたコースを登っていくと遠山(とおやま)、玉川村を一望できます。〔山もみじの街道を楽しみながら登れるようになるといいですね〕 そして緑の中には、桜が浮き出るように咲いています。頂上からは比企丘陵自然公園を眼下にし、遠くは副都心が見えることも。〔嵐山町で一番高いこの山の標高は?*2〕頂上の雷電神社(らいでんじんじゃ)で一休みして、ふもとの遠山の里へと下ります。ここの山桜は必見の価値あり。といえばなにか連想しませんか。遠山寺開基は遠山右衛門大夫光景といわれ、あの金さん、いや名奉行遠山景元の先祖ともいわれています。〔あの腕の桜吹雪は正に遠山です〕峠を国道二五四号バイパス方面へ下り途中を左折、三百メートルほど行くと平沢寺(へいたくじ)に着きます。太田道灌(おおたどうかん)の子源六資康(すけやす)が、暗殺された父の敵を討つべく平沢に陣を置いた須賀谷原合戦(すがやはらのかっせん)の折、道灌の旧知であった僧萬里(ばんり)がこの平沢寺に立ち寄り詩歌会(しいかかい)を開き、萬里が「社頭月」と題し作詩したことが詩文集「梅花無尽蔵(ばいかむじんぞう)」の中に記されています。〔ここまでたどり着くと、今までの努力の効果はか〕 国道二五四号バイパスに出たら右折し、バイパス沿いに約一・五キロ。ゴールはおなじみの菅谷館跡です。畠山重忠公を見習い、その力と人間愛を身に付け一国一城のあるじに…。

— 新しい発見 何かしましたか —

 自然と歴史の町「嵐山」には、たくさんの観光資源があります。この我々の身近にあるたいせつな資源をもう一度見直し、新しい魅力を探し出すためにこのコースを作ってみました。少々厳しい行程ですが、今後の自分の行く末をかけるとともに、嵐山町の本当の良さを発見することにより、今後のまちづくりへのご意見等お寄せいただければ幸いです。
 なお、ゆったりと町内を散策するためのコースも、次のとおりありますので参考にしてください。

ふるさと歩道とハイキングコース

ふるさと歩道とハイキングコース|行程表

『嵐山町報道』362号 1988年(昭和63)3月31日

*1:学校橋(がっこうばし)…日本農士学校が創立された1931年(昭和6)以前から既に「学校橋」と呼ばれていた。都幾川右岸(大蔵・根岸・将軍沢)の子ども達が通う菅谷小学校への通学路にあることから「学校橋」と名付けられた。
*2:大平山の標高は179m。

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