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第6巻【近世・近代・現代編】- 第2章:政治・行政

第4節:平成

平成の大合併

市町村合併を考える8

嵐山町市町村合併調査・研究委員会報告書

 今回は広報嵐山1月1日号で紹介した、嵐山町市町村合併調査・研究委員会報告書の全文をご紹介します。
 嵐山町市町村合併調査・研究委員会(荒井忠正委員長)は公募(5人)を含む15人で昨年9月に編成され、12月16日に嵐山町長へ報告書を提出しました。


嵐山町市町村合併調査・研究委員会報告書

 21世紀の新しい自治体の在り方を問う、市町村合併問題がクローズアップされてきた。
 嵐山町も「昭和の大合併」と言われる昭和30年代初頭に、「七郷村」と「菅谷村」が合併し「菅谷村」となり、その後昭和40年代に入り町制を施行し、現在に至っている。この間、車社会の到来により私たちを取り巻く環境は大きく変貌し、行動範囲に広がりをもたらせた。それにともない、生活圏も変化しようとしている。
 さらには、情報通信技術の発展にともない、居ながらにして多くの情報を手に入れることが可能となった。時代はまさに情報化時代を迎えた感がある。
 21世紀の内政は、地方分権や少子・高齢化の進展、国・地方を問わず財政の著しい悪化など、市町村を取り巻く情勢が大きく変化しており、行政サービス水準を維持するには、地方自治体としての規模の拡大や効率化を図る必要に迫られている。
 こうした折、国は与党行財政改革推進協議会における「市町村合併による自治体数1,000を目標とする」方針を踏まえ、自主的な市町村合併を積極的に推進し、行財政基盤の強化を求めている。これら国の基本的な考え方に基づいて、全国3,218市町村のうち、7月現在384の市町村で合併のための「法定協議会」を、556の市町村で「任意協議会」を設置している。また、1,555の市町村で「研究会」等が立ち上がり、全国の77.5%の市町村が合併に関するなんらかの検討をしている。また一方で、合併拒否を宣言する町が現れるなど、さまざまな動きも見られる。本県でも昨年、他市町村に先駆けて「さいたま市」の誕生を見た。
 私たちの嵐山町においても、市町村合併は町の将来を左右する重要な課題であるが、住民不在の合併であってはならない。住民の合意形成が得られるよう大いに議論を重ね住民意識を高めていく必要がある。
 委員会としては、真に住民の利便性を向上させ、行政基盤の強化が計られるよう検討を重ねてきた。
 その結果、本委員会の総意として、次のような理由から市町村合併を推進することに賛成をし、町長に提言するものである。

1 住民ニーズへの対応と地方分権の推進

 近年、住民ニーズは生活や環境、人間、文化の大切さへと目が向けられ、価値観や目標の転換、個人的思考の重視などから、ますます多様化・高度化しているのが現状である。そして、これらにきめ細かに対応していくためには、住民に一番近い市町村が強い行政能力を持つ必要がある。地域の行政能力を高めることで、住民への行政サービスをさらに良くしていく必要がある。国においても、地方分権を推進すべく、各種の権限委譲・税源委譲が始まっている。
 本町においても、町民の期待に応えられるサービス体制の確保のためには、専門的な人材の確保や財政基盤の強化が不可欠である。このためには、市町村合併による規模の拡大も検討する必要があると思う。

2 少子・高齢社会への対策

 全国的に広がっている少子・高齢化現象は、本町にとっても例外ではない。現在約6人で1人の高齢者を支えているものが、わずか10年後には約4人に1人の割合となる見込みである。これは、「税金を負担する人が減り、逆に税金を使う人が増える」ということで、これらの少子・高齢化の進行への対応は急務であり、町行政にもその対策が求められている。少子化対策や高齢者の福祉サービスの増加は、今後、町の行財政運営に多大な影響をもつ要因であることは明白である。これらに十分な対応を図るためにも、市町村合併を検討していかなければならないと考える。

3 生活圏の広域化への対応

 現在の地方における行財政体制は、昭和30年前後の「昭和の大合併」といわれる頃に決まったものが、そのまま維持されてきている。この間には、社会の構造や仕組みが大きく変わり、マイカーによる交通手段の発達や公共交通機関の整備などにより、住民の生活行動圏域は大きく広がってきている。結果、公共サービスの受益範囲は、納税している市町村の枠を越えて広がっているのが現状である。これらの見直しにより、今まで行政の枠に縛られて目と鼻の先にある学校に通えず、数km先の学校に通わなくてはならないと言った矛盾も、だいぶ解消されるのではないか。こうしたことから、実際の生活圏にあったまちづくりのための見直しをしていくことが必要になってきていると思う。

4 効率性の向上

 市町村合併による人件費の削減や、狭い地域での類似施設の重複をなくすことは、その余剰分を住民サービスの向上にあてることが可能となるほか、広域的視点に立ったまちづくりを可能とし、ゆとりある将来構想にもつながると思われる。たとえば、それぞれの市町村の議員や委員会、審議会等の経費節減は、年間3億円から10億円にも及ぶことが想定される。地方財政の厳しい現状において、住民負担を増やさず、行政サービス提供の高度化を図るためにも、地方行政のスリム化に努める必要があると考える。

5 国・県の動向

 地方分権一括法が平成12年4月から施行となり、これまでさまざまな面で国が関与し、補助金や地方交付税によりその財源の手当てを行ってきたものが、それぞれの市町村が自らの判断と財源で、行政サービスや地域づくりに取り組む方向に変わってきた。これは21世紀を「地方の時代」と位置付け、住民にとって一番身近な市町村を「総合行政主体」として行っていこうというもので、市町村合併により行財政基盤の拡充と自立能力の向上をはかり、自立し得る自治体の確立を図っていこうとするものである。

 こうした流れの中で、嵐山町が現在のまま存続しようとした場合、適切な人材の確保や財政面等を考えても、たいへん厳しいものがあるのではないかと感じる。今後、町民の行政サービスへの期待に応えるためには、大きな決断も必要ではないかと思う。
 なお、市町村合併については、上記の理由により、委員会として賛成の提言を述べたが、次のような課題や要望も委員会の中で出されているので申し添える。
(1) 住民の声が届きにくくなる可能性があるので、合併前の旧市町村の意向に考慮したまちづくり体制を確保する。
(2) 市町村間において行政サービス水準、使用料、手数料及び税金等が異なるため、サービスの低下や住民負担の急増とならないような配慮をする。
(3) 各地域の歴史、文化、伝統など貴重な財産が守られるような対策を講じる。
(4) 合併を無理に推進するのではなく、まとまらない場合は嵐山町として存続していく選択肢も残しておく。

嵐山町市町村合併調査・研究委員会 会議経過
 第1回会議 9月2日
 第2回会議 9月26日
 第3回会議 10月22日
 第4回会議 11月28日


問合せ 役場 企画課 企画振興係 【内線番号省略】

嵐山町広報『嵐山』139号 2003年(平成15)2月1日
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