第6巻【近世・近代・現代編】- 第2章:政治・行政
嵐山町
ローマ・クラブの警告 人口と食糧生産のアンバランス
関根 茂章
ローマ・クラブ【以下ローマクラブ】は一九七〇年に設立された民間組織の研究機関である。そして先進工業国の経営者、経済学者、科学者などをメンバーに加えている。日本からは日本経済ケンキュウセンターの大来佐武郎(おおきたさぶろう)氏、経団連前会長植村甲午郎(うえむらこうごろう)氏、日本電気社長小林宏治(こばやしこうじ)氏、東電会長木川田一隆(きかわだかずたか)氏等がメンバーとして参加している。
ローマクラブは一九七二年三月に報告書をまとめた。『成長の限界』と訳され刊行されている。
「世界の人口増加と経済成長の悪循環にブレーキをかけることが、世界中の国の経済発展の現状を凍結してしまう結果をもたらしてはならないという主張を強く支持する」として、先進諸国が物的成長をダウンさせ、発展途上国の経済成長に対して援助、協力していく必要を力説している。しかし、この表面の言葉とは別に、人口増加のアンバランスに関心がよせられ、発展途上国の「人口爆発」が、世界の食糧危機を、招いているという議論が極めて強く主張され、人口増加と利用可能な資源の問題で、よく引用され著名になっている。「一六五〇年には、世界の人口は約五億、年率一・三%の割で増加していた。一九七〇年には、世界人口は三六億となり、成長率は年間二・一%であった。この成長率で三三年後に、七二億となる。」
このような人口の増加に対して食糧供給はどうであろうか。地球上の潜在的な農耕適地は最大限に見積って約三二億ヘクタールである。その約半分は現在すでに利用されている。残りの土地は開発するのに巨額の費用がかかるが、巨費を投じて耕作可能地を開拓し、そこから可能な限りの食糧を生産したならば、どれ程の人口を養うことが出来るだろうか。ローマクラブはこう設問して、現在の生産力水準では、約七〇億の人口、即ち二〇〇〇年の時点までであり、生産力を二倍にあげても三〇年しか先に伸ばすことは出来ず絶望的土地不足。従って食糧の不足が到来するであろうと報告している。 更に土地、食糧だけでなく、水についても大きな制約要素になっている。
『興農ニューズ』創刊号 嵐山町興農青年会, 1974年(昭和49)9月1日
日本の食糧の自給は総エネルギーに於て、四三%にすぎない。輸入する食糧と飼料の総面積は日本の耕地面積七〇〇万ヘクタールに相当する。然も輸入路は長距離である。だれがこの海の保全を保証しているであろうか。オイル・ショックが経済と心を撹乱したことを想起すれば、食糧飼料が国際外交戦略に用いられたらと想像すると慄然たるものがある。
土地があれている。心が荒(すさ)んでいる。やがてこのままでは日本沈没である。
民俗の保全と定義して、農村の振興に最大のエネルギーを投ずることが、国政の第一義であろう。ギリシャやローマの滅亡をくり返してはならぬからだ。農村と農民、土地と心を軽んじた文明は、すべて亡び去っている。