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第6巻【近世・近代・現代編】- 第2章:政治・行政

第3節:昭和(町制施行後)

嵐山町

所見らん

議員の心構え

議会議長 高橋行雄 

 嵐山町発足以来初の議会選挙が昨年十月八日行なわれた。定数二十二名中現七、元四、新十一と大幅な改選が行なわれたが年令から見ると最高六十五才最低四十才、平均四十九・九才、他町村から比較して平均線がかなり低い。新嵐山町にふさわしい活動力を有している。其後定例会が十二月八日より開会されたが、一般質問に於ては十七通五十六件に及ぶ未曽有の通告があり、其の内容も極めてきめ細かいものがあった。所要時間は一日以上、実質審議期間の半分以上を費やしたが、ここで考えられる事は、愛町愛郷の念に燃えた議員の意欲が感じられた。
 一般質問は住民の意志を反映させる絶好なる機会で、執行者が全町民の意志をくみ、其の要望を今後の行政の上に如何様に現わすかにあり、議員活動上、議案審議と並んで重要なる処とされている。又各議員は議員毎に支持者の超密した支持地区を有している。其地区内に精通した議員等の意見や質問の総合が嵐山町全般の詳細なる事情であり行政の根本となり得る。唯議員は一地区にこだわり、又一時地区との板ばさみとなって苦しむ事がなきにしもあらず、しかし一時の地元感から全体的姿勢を誤らぬ様気を付けねばならない。唯私等議員は一万町民の福利の増進と福祉の向上を目指して議員研修会を開催、議員必携自治六法等の共同購入を行ない、或いは図書室の利用により自治法規及び行財政法規の勉学につとめているが、しかしながら机上の勉強は元より他に実地の見聞が必要であろうと思われる。議員研修視察と広大視野をもつものの外、国会或いは県会の見学又は他町村議会及び一般事務の見聞等、視野を広げ思考力を養い絶えず変動する社会事情に新しいアイデアを取り入れ、常に新しい行政線に誘導する事が肝要であると思う。まして本町は首都圏域に在り、ひっ迫する社会需要都市化現象と変化しつつ在る農山村の現実を長期的に判断し、其の見通しをあやまらぬ様、百年の大計の上に着実なる歩みを進めて行く様、心掛けたい。
 又地方自治体の発展は執行部は元より、議員、職員等互いに其の職責をまっとうする事にあると思う。われわれ議員は、議会の使命と職責を十分に認識し、責任ある行動と公平なる発言を行ない、常に姿勢を正し、住民の模範たるべきである。又執行部との関係にあっては、おのおの其の職分を超えざる様注意し、車の両輪の如き調和を保ち、互に正し合い、ゆきすぎや独善のないよう抑制、均衡の実を上げる事こそ、健全行政の第一歩であると思う。又議員は常に和を失する事なきを肝にめいじておかねばならない。明るい政治、融合和解は人々の和合にあると思われる。発展的諸事象の中に住民の利解と協力なくして果せるものは一つとして有り得ない。かりに一つの道路の効用は、本町発展上欠くべからざるものであっても、敷地の協力なくして造る事は不可能であります。不可能の中には経済的不可能と感情的不可能とがあると思うが、議員としては其不可能を可能とする努力が必要である。私等は常に住民の中に透込んで、之を啓蒙説得し、和をもって解決に導引く方途を講じなければならないと思います。
 地元負担土地の減少は各種産業の資本投下に類したものにして、其の資本投下が近隣地域の利潤を生み出す第一歩である事を説得し、一個人の犠牲を強いる事なく、地域共同の元に協力態勢の確立を行い、融和の中に実施出来得る様心掛ける事を希望します。しかるに之が推進に当る議員は先ずもって人に信頼され、信頼を受ける人格を造る事に専念しなければならない。又は議会内部に於ても信頼出来る議員は多くの賛成を得られる議員であり、調整発展の上にも大きく貢献される議員であると思われます。
 議員諸君のなお一層の奮闘を御願い致し、私の所見と致します。

『嵐山町報道』181号「所見らん」1968年(昭和43)2月20日
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