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第6巻【近世・近代・現代編】- 第2章:政治・行政

第2節:昭和(町制施行前)

旧菅谷村・七郷村

小学校を閉ぢて一万円を浮かす
  たまりかねた七郷村で景気直しの決議

比企郡七郷村では繭の暴落についで、武州本場絹物の窮境等にて全く疲弊の極に達し、税金の滞納者続出し、更に秋蚕不況の声に、十三日同村小学校に各区代表者会を開き、左の決議をなし、来る廿日村民大会を開き決議を貫徹することになり、次いで福田村、八和田村、菅谷村等も廿日前後、村民大会の開催準備中であるが、この決議が容れられざる場合は、小学校を一ヶ年閉鎖して二[ママ]万円の教育費を浮出させ、村民負担の軽減に充てる計画である。
一、小学校職員の俸給即時四割削減
一、村吏員の俸給その他一切即時五割削減
一、村農会廃止
一、役場書記俸給技術員廃止[ママ]

『東京日日新聞』埼玉版1930年(昭和5)7月15日

※句読点を新たに付けた

この記事が掲載されている同紙面に「旅費の節約から/お役人が泣く/国県費とも一割五分を減額/きのふ県から発表」、「節約額が三万円/お気の毒だが忍ばれたいと沢野快慶課長の談」という見出しの記事があり、「お巡りさんが大こぼし」の小見出しつきで、「……県警務課の調査によると各人一ヶ月当り約六十銭の減収で、一年間には七円廿銭となる。六十銭といふとわづかな金高のやうであるが、月収五十円内外の小役人に取っては、子供の菓子代や煙草代に大支障をきたす事になるで県下一千名のお巡りさんは寄るとさはると不平不満をこぼし合ってゐる」と報じている。

五割減俸を決議 革新同盟で実行
  七郷村の村民大会

比企郡における学校職員その他の減俸問題のトップを切った七郷村の村民大会は廿日午前十時から同村小学校で開催、五百余名の村民集合し、既報の如く
一、小学校教員俸給四割減
一、村吏員俸給五割減
一、村農会廃止
一、役場書記、農業技術員廃止
外数項を満場一致可決し、実行方法として村政革新同盟を結成し、直に村及び県当局へ決議即行を迫ることとなったが、もし学校職員減俸に付、県当局が邪魔する如き事あらば、連絡ある近村数ヶ村連盟して一挙に同盟休校に出づるの準備をなすことの申し合せをなして閉会した。

『東京日日新聞』埼玉版1930年(昭和5)7月22日

※句読点を新たに付けた

減俸続出に対し県当局うごき出す
  義務教育の重大問題として

近く各町村へ通牒を出すか
町村財政の逼迫から県下町村で青年団や在郷軍人会等の諸団体が町村吏員及び小学校教員の俸給削減、或は寄付要求を決議して、町村当局に迫るもの次第に多く、県小学校教員会では去る十九日大宮町において常務委員会を開いて、これが対策につき協議し、反対決議運動開始には至らなかったが、とも角、義務教育の基礎を危うくする教育界の大問題として、県では深く憂慮し、廿日日曜日にも拘らず、間宮学務部長、井田学務課長以下視学など十余名学務部長室に参集、右の対策に当て通牒を発する筈である。右につき間宮学務部長は語る
 どうも困った問題で、減俸するなともいへないし、寄付は勝手だから黙視してゐてもよいといふわけにもなる。とも角、なほ考慮の上、何らかの処置をとりたいと思ってゐる。

『東京日日新聞』埼玉版1930年(昭和5)7月22日

※句読点を新たに付けた

不謹慎な福田村の吏員教員

村民から恨まる
比企郡福田村小学校及び役場吏員一同が廿日都幾川で鮎漁園遊会を催し、ドンチャン騒ぎをやったが、同日、隣村七郷村では減俸問題の村民大会が催されてゐるのをよそに鮎漁などとは不謹慎だと村民の反感を買ひ、村民負担軽減のために、小学校、村吏員減俸及び納税問題に対する村民大会準備の各区代表委員会を廿五日開催する筈。

『東京日日新聞』埼玉版1930年(昭和5)7月24日

※句読点を新たに付けた

七郷村の減俸運動解決す

比企郡において最初の減俸運動の一声をあげた七郷村の村民大会の結果は、その後、村当局村民間に左の如く決定を見て解決した。
一、村長、助役、区長、学務委員、戸数割調査員、消防組頭、同部長、衛生組合長、同委員は報酬半減
二、村会議委員報酬全廃
三、収入役、書記給二割七分減
四、役場員賞与全廃、使丁一名減員
五、各種団体補助金半減
六、学校職員より自発的に俸給一割寄付

『東京日日新聞』埼玉版1930年(昭和5)9月26日

※句読点を新たに付けた

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