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第6巻【近世・近代・現代編】- 第1章:地誌

第8節:稲村坦元先生原稿「菅谷村史」

遠山隧道*1

 大字遠山ノ東方ニシテ平澤區ノ堺上ニ在リ、明治初年鑿築*2セシモノ、関東地方隧道ノ嚆矢*3トシテ草創*4ノ数月都鄙ヨリ来観セシモノ多カリシ、其数町西麓ヲ流ルヽ槻川中南北ノ野馬渓*5ト唱フル長峡アリ、高崖低磯ノ彼此晶岩*6碧潭*7ヲ隠顕シ、湛漣*8其間ニ刻々洋々放下セルモノト相須チ*9、此般*10ノ風光宛然*11天界仙境*12ノ概*13有リ

稲村坦元先生原稿「菅谷村史」

*1:隧道(ずいどう)…トンネル。
*2:鑿築(さくちく)…うがちつくること。
*3:嚆矢(こうし)…物事のはじまり。最初。
*4:草創(そうそう)…創業のこと。
*5:野馬渓(やばけい)…耶馬渓。大分県中津市を流れる山国(やまぐに)川の渓谷。
*6:晶岩(しょうがん)…きらめき光る岩。
*7:碧潭(へきたん)…あおあおとした深いふち。
*8:湛漣(たんれん)…水を深く湛(たた)えあるいはさざなみとなること。
*9:相須(あいま)チ…一つになって。
*10:此般(はん)…すべておしなべて。
*11:宛然(えんぜん)…そっくりそのまま。
*12:仙境(せんきょう)…仙人の住むところ。
*13:概(がい)…おもむき。

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