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第6巻【近世・近代・現代編】- 第1章:地誌

第7節:七郷村郷土研究(抄)

第二編 郷土研究

第七章 七郷村に於ける教化

第三節 社會教育

觀察要項

 學校以外に於て智識や道徳を進歩させる機関にはどんな者があるか。それを觀察させるのであります。

1 青年會…

この目的を主としてたてられたとばかりはきまらぬがこの智徳の増進も其の一目的たるは言を俟たぬ。第五章の第六節には青年會の名だけは記してはあるが其の内でこの目的にむかって進んでゐるのを次に記さう。

イ 古里戌申青年會(其の事業の内社会教育に属するもののみ)
 夜學會 毎年春秋二回宛開きて學問の補習をなす。明治四十五年(1912)三月迄に已に八回之れを開けり。開期三週間。
 幻燈會 談話會も毎年之れを開く。
 雑誌回覧 毎月實業之日本、實業之埼玉を購入して之れを回覧す。
 文化倶楽部 毎月一回文題を撰定し作文を練習す。
 學藝會 毎年一回宛之れを開く
 公共事業 小學校の土取人夫五十人寄附。道路に指導標を建つ。
 慈善事業 明治四十三年八月の大洪水には水害地に宛て空俵百五十俵縄二百房に金五円を添へ寄贈す。貧民児童二名へ教科書を貸與す。
 見學旅行 會員全部の農事試験場参観、数名の豆相地方旅行をなす。
 講習會 総會の際講師を聘し、或は特に一週間或は二週間これを開く。
 圖書文庫 有志の宅の贈及び會員外よりの寄附金、會員の骨折りより得し金員にて購入せし図書を藏め會員の閲覧を促す。
ロ 越畑青年勵農會學集部(社会教育の資たるもの、外は畧す。)
 教育部に於ては先づ夜學會を開く。部員の學力を練磨せんがために事務所に於て春秋二季必ず夜學會を開催し相當の講師を聘して修身、国語、算術、地理、歴史等の研究をなす。雑誌を回讀し又は書 籍を撰定して部員各自専心研究し、毎月十五日講談會を開きつつあり。幻燈會は祝祭休日等を利用し、(夜間)各所に開催し教育衛生産業等の講話をなし地方改 良を謀りつつあり。
 自治部 本村之小學校新築に際し部員全部土取人夫を寄附し、道路の改修をなし道しるべ標を建て通行人の便を図る。本村小學校の昇降通路に石屑を敷きて一般生徒の通行を便にせり。
 勤倹貯蓄部 共同耕作により勤倹忠實協同の美風を羪ふと共に本部基金を作るの目的にて田畑を借入れ協同勞役に服しつつあり。共同貯金をなさんため毎月太縄 五房宛を集め賣却貯金しつつあり。亦夜業貯蓄とて毎月五回夜業を行ひて太縄拾房宛を集め一纏めに賣却して貯金しつつあり。
 善行表彰部 地方人にして抜群の善行ある者殊に小學校の児童の表彰に力を注ぎ大正二年(1913)三月迄に既に三拾五人に及べりと云ふ。
 圖書館 購賣部の収益金並びに共同耕作の収益金等にて買ひ入れたる圖書に字有志の寄附金を以て購入したる図書会計数百冊に達したるを以て大正二年(1913)図書館を設立し之れが發會式を四月三日にあげたり。爾来閲覧者多し。
ハ 七郷青年會支部就實會 本村内の三字に各多数の會員を有するものにて、夜學會及圖書回覧などなして會員の學力増進を努め居れり。

2 講話會

 村、或は學校、農會等の主催にて各種の講話會を開く。其の時期は毎年三月、一月にて校友會の総会、農會の褒状授與式等にて、臨時に村及び學校主催にて、教育、産業、衛生等に関する講和會ありて村民一般に聴かしむ。

3 新聞雑誌

 本村にて講読し居る新聞は、國民新聞を最多とし、埼玉新報、報知新報、毎日新聞、朝日新聞、東京日々新聞、二六新聞、萬朝報等であって、雑誌に於ては、實業之埼玉、扶桑、實業之日本等、其他寄贈雑誌新聞甚だ多し。

4 掲示板

 本村十箇所に掲示板を設け、重要の出来事、及び村役場よりの報告、達し、並びに告示等を貼布して以て村民の智識増進に努めてゐる。

七郷尋常高等小学校(板倉禎吉編)『郷土研究』(嵐山町立七郷小学校蔵)
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