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第6巻【近世・近代・現代編】- 第1章:地誌

第7節:七郷村郷土研究(抄)

第二編 郷土研究

第六章 七郷村と隣村との比較觀察

第二節 村の形と位置

觀察要項

 第一節でなすべき仕事の一ではあるが茲に殊に書き出したのは村の形の上から仕事をなす上の特色と生ずるものであるからであります。

1 村を位置の上から觀察すること。

 海岸にある村…郷土にはない。
 河岸にある村…大河村、八和田村、市田村
 小さくいったならば本村の勝田や、杉山(其内でも小字の川袋は殊にさうである)は先づさうである。
 谷にある村…小川町は村ではないが全くさうである。小甲府市の觀がある。平村、明覚村。
ニ 山の麓にある村…吾が七郷村は一つの山ではない。また一つの山脈ではないが大部分山麓にある村といって支障ない。大字廣野、杉山などは全くさうである。
 隣村なども大抵そうである。
 平原にある村…小原村、御正村(みしょうむら)【旧・江南町、現・熊谷市】等先づ然らん。

2 村のある場所によってそれぞれ特殊の形状をなしてゐる。

 一列に長く道路に沿って延びて居る村…八和田村、男衾村の大字今市、菅谷村、唐子村(からこむら)【現・東松山市】、本村では大字古里(ふるさと)の如き。
 二列乃至數列に道路を中心として重なり合ふてゐる村…吉田村。
 海岸の如く一つの道路を表面として更に一方に発達して居る村…本村にては大字吉田、大字古里等によって觀察せしむることが可。大字吉田(上吉田)、福田村和泉(いづみ)等である。八和田村、本村全部からもさうである。
 木の枝の出で居る如く十文字又は斜に別れて居る村…本村も先づさうであらう、小原村
 小川を挟んで其両側に建てて居る村…大部分は河は村境になって居るものだから少ない。大河村【現・小川町】、小川町【下里】、唐子村【現・東松山市】、竹澤村【現・小川町】等である。
 一定の密集した部落をなさずに廣くまばらに散布して居る村…宮前村、小原村、男衾村、本村ならば吉田の如き。
 小さい部落が所々に散布している村…本村、八和田村、西吉見村

3 産業の上からの區別

 漁業を主とする村 わが郷土にはない。
 農業を主とする村 わが郷土の村は先づ全部之れに属するものである。
 養蚕を主とする村 児玉郡に於ける村はそうである。わが郷土の村などは副業、そしては大いにやってゐるがまだ主とするに至らぬ。
 工業を主とする村 之れも吾が郷土にはない。

 猶右【上】の農業を主とする村でも其れを分けて穀物、蔬菜、果樹等になす事が出来る。川崎町【現・神奈川県川崎市】近所の村は果樹を主とし、大都會のすぐ側の村は蔬菜を主とするが、わが郷土の村は穀物を主とするより外には方法ないのである。また工業を主とする村でも同様に種々に区別する事が出来やうと思ふ。

七郷尋常高等小学校(板倉禎吉編)『郷土研究』(嵐山町立七郷小学校蔵)
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