ページの先頭

第6巻【近世・近代・現代編】- 第1章:地誌

第7節:七郷村郷土研究(抄)

第二編 郷土研究

第二章 郷土の水界

第一節  水界觀念

 地球の表面にある水は其の移動に依り二種に區別する事が出来る。動水と不動水と。川水は動水で、湖沼及海の水は不動水である。そして大洋の水は不動水の大なるものである。茲で水界と云ふのは陸地に對する海洋のことである。わが郷土では洋海を觀察する事は出来ぬ。故にこの水界の觀念は吾が郷土の児童には實に漠たるもの、殆ど其の觀念のないといってもよいほどに乏しいのである。そこでこの觀念を如何にして養ふか先づ郷土に於ける適當な湖沼(三反田沼は學校よりも近く、そして水界觀念養ふに最も要件を具備して居る。即ち海岸を縮少せるもの)によって類推させねばならぬ。
 海水の深く陸地に湾入して居るを港、入江、湾、入海等に分ち洋海が狭く連続して居ると海峡と稱せられていること。修学旅行などに際しては先づ第一に實際の海洋につき觀察せしめて其の觀念を正確にせねばならぬ。
 海面の廣大なる事は是れを直觀せざる者に對しては如何に巧みに説明しても到底了解させる事は出来ぬ。これ丈はどうしても修学旅行の時までのばさねばならぬ。
 波浪の壮大なる響も先づ小沼に寄する小波を以て類推させると云ふことは少し酷に過ぐるであらう。わが郷土に於ける波浪の最大限はどの位か先づ大水に於ける川に於て直觀せしめねばならぬ、また其の破壊力の如何程なるかを知り置きて、海岸に於て直觀し得る事の来りたる時比較せしめねばならぬ。旅行をなせし際、海岸に於て觀察する其の要項を次に記さす。

七郷尋常高等小学校(板倉禎吉編)『郷土研究』(嵐山町立七郷小学校蔵)
このページの先頭へ ▲