第6巻【近世・近代・現代編】- 第9章:戦争
前線慰問誌『比企』第1号 (1944)
麦蒔
七郷国民学校初等科四年男子 K
きのふは日曜なので一日麦蒔の手伝ひをした。僕のしごとはねえちやんとたいひ(堆肥)を畠へ運ぶことであつた。
前線慰問誌『比企』第1号「郡下学生傑作集」 1944年(昭和19)5月
お父さんはため(溜)を前の畠へ出すしおぢいさんはさくをこまんがで引きました。
おばあさんはたねまきをするし大きいねえちやんはさくへ肥料をひいてあるきました。
あ母さんは共同作業に出ました。
たいひをかごにいれてリヤカーにつんでは僕が引いて小さいねえちやんはおしてをしました。
僕が一生けんめいにしたので大きいねえちやんが「よくあきづにするなあ」といつたから僕は「大きいねえちやんだつてよくあきずにするではないか」といつたらおばあさんが「だつてねあちやんはおとなだもの」といつたのでみんなが笑つた。
夕はんの時「よく働いたね」とお母さんにもほめられた。