第6巻【近世・近代・現代編】- 第9章:戦争
比企郡七郷村青年団『青年団報』第2号 (1939)
若き力
青木政雄
朝霧は晴れて昨日の嵐もいつ暴れたのかの様にさわやかな晩秋の風が吹いて居る。田圃にはすがすがしい空気を精一杯に吸ひ、さくさくと朝草を刈る若人の群れがあしたの希望に燃へて其一鎌一鎌に銃後国民の心意気が溢れて居る。此の心意気こそ将来報国の一念にのみ希望を持つ若人でなければ誰あらう。噫々其姿此の心意気が五体を満ち満ちさせて自ら指揮する何の如くに黙々と働いて居るのだ。
比企郡七郷村青年団『青年団報』第2号 1939年(昭和14)12月
何々云ふ偉大なる姿で有りたのもしい若人ではないか。田圃の稲穂はそよ風にゆられるまで神秘的だ。そうして朝の精か舞ひでそうな陽光をあびてやがては秋の収穫を目前にひかへ今日ありし日を約束して居たかの様に思へてならぬ。
稲穂は唯だ此の群がる若人達に今までの努力と汗の結晶を感謝するかの如くに穂頭をさげて居るのだそうだ。私達も此の青年で有り此の稲穂を見習をう。実れば実るほど頭をたれる稲穂噫々何と云ふ美しいさわやかな作物であらう。
万物の長たる若人達に修養せよ、自覚せよ、そしてあらゆる困窮を克服せよと物言は教訓なのだ。此の教訓こそ我等若人の胸には愛国の情熱が益々つのり、長期にわたる国難を打開すべく近き将来を期待されて居るのだ。
噫々何たる重務であり、此の重き務を果す、若人達は何たる幸福であらう。