第6巻【近世・近代・現代編】- 第8章:女性の活動
菅谷婦人会志賀支部 文集『あゆみ』1960
短歌
志賀・金子きみ
朝草を刈りし吾身を白百合が
じっと淋しく見つめてる
会報にいでし君の名をとけば
幼なじみが忍ばるる志賀・多田せい
新らしきひながうみたる初卵
夫は片手にかざしつつ来る
暴風雨に吹き倒されし鳥小屋を
どびだし鶏ら吹かれよろける志賀・栗原きみ江
秋の夜は静かに更けてくもりなく
はれし彼方へ雁が鳴き行く
井戸端に釜とぎおれば山のはに
かかりし月のさえし夜かな
真珠にもなきこの色は黄金なる
夕日に映しいなほなりけり志賀・武井眞佐
父母にますはらからまてる古郷
ませりまたまとなりて
生活の苦しき事をさりげなく
ほほえみ語る人の淋しさ
古寺の垣根に咲きし白き花
甘き香りに無き母思う志賀・大野春枝
菅谷婦人会志賀支部『あゆみ』 1960年(昭和35)1月
残暑きびしき昼の暑さを忘れさそと
月さえ渡る夜のしづまり
空の彼方にいつしか夏もゆきかけて
野のそよ風に稲穂花かく