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第6巻【近世・近代・現代編】- 第8章:女性の活動

第1節:婦人会

菅谷婦人会志賀支部 文集『あゆみ』1960

稲刈

            多田

 天高く馬肥ゆるの秋、耳にしただけでも如何にも収穫の秋を讃(たた)えるかの様である。
 今年は幸い台風の被害も最小限にて、耕地一帯黄金の波を立て、稲穂は農夫の努力を心から感謝するかの様に重く頭を下げて居ります。晴れ渡った或る日、おぢいさんを留守居にみんなで稲刈りに出掛けた。中学生の末っ子も農繁休業になったので一役。先づ適当に間隔をおいて順に刈り始めた。みんな一生懸命追いつまた追はれつ、まるで競争のようであった。とおりがかりの人が「手揃いで面白いようですね」とほめてくれた。しかし、その頃には腕も腰もすっかりつかれてみんなと並んで刈る事は大変な苦痛だった。年のせいかしら、近頃農具の重さを感じるようになったのも。こんなことを一人つぶやきながら鎌をといていたら、おじいさん似でお茶づきの末っ子は「もうのどがかわいちゃったよ」とお茶をさい促する。それを幸いに急いで家へ来て、お茶を持って田圃(たんぼ)へ行ってみると大部分刈れていた。早速く刈った稲に腰を下ろしてお茶をかこんだ。野良が近いので田圃でお茶を飲むのは珍しい。それだけに熱いお茶はまた格別なもの。体育祭、慰安旅行の話等、賑やかに話していると下り電車が通った。遠足にいくらしい小学生が窓から盛んにハンケチを振っている。私達も思わずかぶっていた手拭(てぬぐい)をとって、見えなくなるまでふった。家中楽しい休みの中にいつしか身体のつかれも忘れて、みんな揃って次の仕事にかかった。

菅谷婦人会志賀支部『あゆみ』 1960年(昭和35)1月
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