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第6巻【近世・近代・現代編】- 第7章:文芸・学術・スポーツ

第1節:俳句・短歌

短歌

山下たえ『われに詩あり』3

藤縄あきさんを偲んで

人生の 苦難の道を 健やかに
       丸く歩いて 後を濁さず
何処にも 咲く花でなし 撫子の
       心静かに 穏やかに逝く
病院に 見舞いて友の 細腕に
       点滴打てる 痛さ身にしむ
友見舞い 病室を出る 淋しさは
       何故か悲しく 後ろ髪引く


俳句

五月雨の 晴れ間を急ぐ 千切れ雲
水溜まり 覗いて通る 初島田
五月雨で 書く事とも無し 日記帳
五月雨に 通学道路 傘の花
傘干して ほのかに匂う 沈丁花
百合の花 一枝折って 床の間に
問わずとも 苦しさわかる ベッドの身


あとがき

 これは私が83年間生きてきて、我が人生を振り返って見たとき、ああ、あんな時代もあったっけ、こんな事もあったなあと思出しながら、自分が体験してきた苦労や悲しみ、また喜びをも思出しながら、その時その時を過ごしてきた私の歩んだ道、体験や生活を、短歌と言う三十一文字の歌の世界に現したものです。
 無学な一人の女が農家に嫁ぎ、そして戦争と言う辛く苦しい生活を強いられ、家を守り、二男二女を育て上げた。悲しく辛い人生を歌に託して、折りある毎に書き留めてきた拙い歌で有ります。自分が生きてきた証しとして、この度小冊子に纏めてみました。
 言葉も語彙も少なく稚拙なうたでは御座いますが、みな体験から出来た歌であり、美辞麗句を並べて作った綺麗な歌でも有りません。誰に読んでもらわなくてもいい、誰に聴いてもらわなくとも良い、自分の本音で、自分の話し言葉で綴ったものであります。
 これからも命ある限り、嬉しいにつけ、悲しいにつけ、三十一文字の歌の中に自分の気持ちを折り込むことが出来れば幸いと思います。何時までもペンと雑記帳を離さないように持ち歩き、生活の歌をたくさん作って生きて行こうと思います。

   平成十二年(2000)二月二十日
                    山下たえ

山下たえ『われに詩あり』 2000年(平成12)2月
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