第6巻【近世・近代・現代編】- 第6章:くらし
生活
田幡憲一
私は昭和七年(1932)生まれの六十三歳です。私が生まれた十一月十五日は大嵐の朝だったと母親がよく話しておりました。私がうろおぼえにしている事に上組(かみぐみ)とゆう言葉が大人たちの間でよく使われていた。
そして冠婚葬祭の時に使用する内側が朱塗りのお椀、黒塗りのお椀、そして壷平(つぼひら)とゆうような事を聞いたことも。会席膳、座布団、それらの品物が三十人分揃えてあった。そのお椀の蓋には上と書いてあった。一度使用すると次の人が使用するまでの間、それらの品物を預かり保管する。
それらの品物と一緒に取り扱ったなかに盤台(はんだい)があった。盤台はいまでも土蔵の中にしまってある。盤台は、まず親戚で家の建て替えの時などに紅白のおもちをもってお祝いに行く時に使う。
また親戚に火事があると、火災にあった人や消防手さんたちのごはんかわりに三角おむすびを作り盤台に入れてもって行く。この盤台は、赤飯は一荷で一斗入る大きなお鉢です。
盤台はお祝いに使うので、作りもとても立派で外回りも下半分は黒漆、上半分は赤漆塗りで、足も三ヶ所切り込みがありそこのところを利用してロープで花結びに結ぶのか大変だった。こういうものは一生に何回も使うものでもないから、組(くみ)で共同で購入して共同意識を高めたのだと思う。(1995年10月記)