第6巻【近世・近代・現代編】- 第1章:地誌
三、村の生活(その二)
第3節:家普請(三) 共同の祭典
どうづき歌
今なら地面を掘割り、型板にコンクリートを流し込んで終る基礎工事であるが、昔は地形(じぎょう)といって賑やかな仕事であった。こういう時に近隣の人々が総出で手伝ったのである。どうづき歌に合わせてたこの綱を引いたのである。これは仕事というよりは一つの祭典という気配が強く感じられる。中村保蔵氏によって、このどうづき歌が紹介された。次のように歌い乍ら礎石をうち込むのである。どうづき歌は地形歌ともいう。
音歌取り
「やれどっこい
本調子だ にしよ」
綱引連中
「おい なる程」
音頭取り
「めでためでたや
お宅は新築で
今日は地形で
おめでたいぞや
エーヘンヤラナ」
ホイ
綱引連中
「よいさ よんやさで
ようほいさ
あれわのせ またも
エーヘンヤラナ」
ホイはじめは音頭取りと綱引連中で歌のやりとりをして、新築の仕事を祝福し、最後に「よいさ よんさで……」というところで、綱を引いては、どうづきの心棒を打ち下すのである。このメロデーは幸に、藤野秀谷氏が音譜にしてくれたので、前頁に掲げておいた。
『嵐山町誌』(嵐山町発行、1968年8月21日)