第6巻【近世・近代・現代編】- 第1章:地誌
比企郡寺院明細帳
埼玉縣管下武蔵国比企郡杉山村字上城ヶ谷戸
同縣同國男衾郡(おぶすまぐん)赤浜村*1普光寺*2末
天台宗*3 比叡山派(ひえいざんは)積善寺(しゃくぜんじ)
*1:現・寄居町赤浜。
*2:普光寺(ふこうじ)…大悲山瑠璃光院。本尊は薬師如来。開山については不明。江戸の寛永寺末で、末寺14を持った。寛文年間(1661-1673)に、住持伝海が比企郡中爪村普光寺(現・小川町中爪)へ隠居しないままに移住。赤浜の普光寺を無住兼帯として留守居を置いた。伝海は中爪に葬られている。
*3:天台宗(てんだいしゅう)…唐で学んだ最澄(さいちょう)が帰国後開いた仏教の宗派。一、本尊(ほんぞん) 阿彌陀如来(あみだにょらい)
一、由緒
抑(そもそも)当山者(は)人皇*1第一百五代後柏原院*2御宇*3大永(たいえい)五年(1525)ノ草創(そうそう)ニシテ祐源阿闍利(ゆうげんあじゃり)の開基(かいき)ナリ。本尊ハ則チ開祖(かいそ)自ラ彫刻(ちょうこく)し玉(たま)フ尊像(そんぞう)ナリ。其原由ヲ尋(たずね)ルニ城跡(しろあと)ノ山腹清泉(せいせん)アリ、往昔(おうせき)根本大師*4福聚金剛*5此処(ここ)ニ於テ金光明経(こんこうみょうきょう)廣説(こうせつ)し玉(たま)フ聖地(せいち)ナリ云々(うんぬん)。彼ノ至徳(しとく)ニ慣(なじみ)テ祐源阿闍利爰(ここ)ニ一宇(う)ノ精舎(しょうじゃ)ヲ建立(こんりゅう)、彌陀*6ノ尊軀(そんく)ヲ奉(あんち)安置(たてまつり)、國家安穏(こっかあんのん)萬民豊楽(ばんみんほうらく)ノタメニ金宝山玉ノ法會(ほうえ)ヲ修行し玉フ靈場(れいじょう)ナリ。依之(これにより)、号ヲ福王山(ふくおうざん)泉明院(せんみょういん)積善寺ト称(しょう)ス。*1:人皇(にんのう)…天皇。
*2:後柏原院(ごかしわらいん)…後柏原天皇。第104代天皇。在位1500-1526年。
*3:御宇(ぎょう)…天皇の治める時代。
*4:根本大師(こんぽんだいし)…最澄(767-822年)のこと。
*5:福聚金剛(ふくじゅうこんごう)…最澄の金剛名(こんごうめい)。福寿金剛は寳幢如来(ほうどうにょらい)をさす。
*6:彌陀(みだ)…阿弥陀如来。一、本堂 間口七間三尺 奥行六間
一、庫裏(くり) 間口二間三尺 奥行三間三尺
一、境内 貮百八拾七坪 官有地第四種
一、境内所有地
田(た)反別(たんべつ)貮(に)畝(せ)廿(にじゅう)八歩(はちぶ) 杉山村字表猿ヶ谷戸(おもてさるがいと)
地價(ちか)金八円拾七銭(せん)
田反別四畝拾歩 同村字岩花
地價金拾七円九拾銭壱厘(りん)
田反別壱反四畝三歩 同村同字
地價金四拾八円五拾六銭貮厘
田反別壱反拾四歩 同村同字
地價金三拾六円三銭貮厘
畑(はたけ)反別(たんべつ)九畝七歩 同村字玉ノ岡
地價金八円三拾貮銭三厘
畑反別壱反八畝六歩 同村同字
地價金拾六円四拾銭貮厘
畑反別五畝貮歩 同村同字
地價金四円五拾五銭九厘
畑反別壱反四畝廿四歩 同村同字
地價金拾四円七拾壱銭九厘
林(はやし)反別(たんべつ)八畝拾六歩 同村字上城ヶ谷戸(かみじょうがいと)
地價金壱円貮拾八銭
林反別四反五畝壱歩 同村字下城ヶ谷戸(しもじょうがいと)
地價金六円七拾五銭五厘
林反別貮畝四歩 同村字玉ノ岡
地價金三拾貮銭
林反別貮畝歩 同村同字
地價金三拾銭
荒地(あれち)反別(たんべつ)壱畝拾五歩 同村字岩花
明治九年ヨリ仝十七年迄九ヶ年季(ねんき)一、檀徒(だんと) 三拾九人
一、管轄廳(かんかつちょう)迄 拾貮里貮拾五町
以上外ニ
山林(さんりん)壱反六畝拾八歩 杉山村字上城ヶ谷戸
地價金貮円四拾九銭
原野(げんや)貮反歩 地價金四拾銭 〃字裏猿ヶ谷戸(うらさるがいと)九四九番ノ七
山林壱反五畝歩 地價金弐円五拾弐銭 〃字上城ヶ谷戸六〇一番ノ一「昭和38年度文書 埼玉県学事課 比企郡寺院明細帳(一)」