第6巻【近世・近代・現代編】- 第5章:社会
電気・水道
異常渇水にメゲませんでした!
——わが町の水事情——この夏、異常渇水にみまわれた関東地方。比企地方も例外にもれず、嵐山町を除く近隣市町村は一時かなり深刻な水不足に悩まされました。
嵐山町でも槻川、都幾川の合流点で川底が見えてしまうほど渇水しました。
しかし、なぜ嵐山町は断水などの問題もなく、だいじょうぶだったのでしょうか。また、未来永劫(えいごう)的に〝緑と清流の町嵐山〟でいられるための予防措置はとられているのでしょうか。
工業団地の建設も決定され、人口の増加、工場廃水、いずれ建設されるであろう公共下水道に伴う水使用量の増加など、一番身近な問題でありながら、いざとならないと関心がもたれない水まわりについて、町長をはじめ、町当局の関係者にお話を伺ってみました。問 今年の渇水は異常でしたが、嵐山町はだいじょうぶでしたね。水道水供給の現状について、また今後の計画などについてお聞かせ下さい。
水道課長 現在供給量は一日あたり一万二千トンであり、今夏の最高使用量は七月六日の七千六百六十トンでした。いずれ工業団地ができますが、同団地の使用計画量は一日あたり二千六百トンであり、数字の上では現施設でまかなえる予定です。しかし、人口の増加、将来の下水道計画に伴う使用等を考え、あたらしい水源の開発、県水の導入が計画されています。しかし、県水は価格がかなり高く、町水との調整が必要であり検討中です。いちおう昭和六十七年に五百トン導入を計画しています。
問 現在の水源はどうなっていますか。
水道課長 現在、三カ所の水源(井戸)があります。井戸の水質が大変良質のため、観測ろ過池、その他の薬品沈殿所等の特別余計な施設が不要であり、井戸から汲み上げた水を直接タンクへ上げて塩素滅菌をし、給水しているだけなので費用がかからない。また、山があるため、タンクに上げればあとは自然流下で供給でき余分な動力を必要としないことも料金を安く抑えられる要件となっています。
問 地下水のくみ上げ過ぎによる地盤沈下の問題をよく耳にしますが、嵐山町はいかがですか。
水道課長 水源の水量は豊富であり、嵐山町の地盤沈下は、広野で一〜二ミリあったがそれ以外はありません。しかしいくら豊富だといっても、水はたいせつに使うにこしたことはありません。井戸は〝生き物〟です。いくら良い井戸でも、適切規模の取水でなければ枯れるのも早くなります。水はたいせつに使っていただきたい。
町長 町としても、水問題についてはできる限り先取り政策を行っていくつもりでいますが、環境を良くするためには住民一人ひとりの努力もたいせつと思う。ご協力をお願いしたい。
問 自然の恵みを受けているわけですから私たちの努力も必要ですね。しかし、そんなに良い水質も水源の清流が汚されるようなことがあっては困ります。公共下水道等の計画はありますか。
町長 あります。水を使うのは簡単、汚すのも簡単、使用後の処理がたいせつです。下水は文化のバロメーターといわれますから。
ただし、下水にはばく大な金が必要です。嵐山一町では不可能なので、滑川町と合同で計画しています。
都市計画課下水道係長 現在の計画では、昭和六十九年(1994)から一部供用開始となる予定です。公共下水道および流域下水道を併せ、約百六十億の費用が見込まれています。流域下水道とは、終末処理場の関係および各町への流域幹線をいい、公共下水道とは、各家庭と直結される下水道をいいます。
昭和六十三年(1988)に建設省の事業採択がなされれば、昭和百年(2025)をメドに事業実施となる予定です。現在、計画全体を見直し中ですが、かなり長期的な計画となります。
そのほか、都市下水道として駅東区画整理区域の中に、沈殿の都市下水道を実施中です。集水区域は四十九ヘクタール、いずれ公共下水道につながることになります。
町長 工業団地の廃水による汚染には、下水道ができるまでは厳しい検査体制をとって監視し、川の水質を保っていきたいと思っています。
水道課長 きれいで豊富な水に目をつけ、ここに住みついた先住民の人たちに先見の明があったわけですが、町営水道の前身である簡易水道組合を設立されたかたがたの先取り感覚、苦労の末の完成という努力があったことを忘れてはならないと思います。当時は村だったのですが、周囲の反対にあったりして大変な苦労の末軌道にのせたわけでして、村は軌道にのった時点で引き受けたのですから楽だったと思いますよ。
嵐山町の発展は、水のおかげであるといってもいいのではないでしょうか。私たちもたいせつな水ですから地道に漏水調査を実施しています。今日までに八カ所で二百五十トンもの漏水をみつけることができました。
(八月二十八日 町長室で)水、それは〝生命の根源〟といわれます。蛇口を開くだけで簡単に得られる水、その恩恵を忘れることなく、私たち一人ひとりがたいせつに水を使い、汚さない努力をすることが人間としてのエチケットであり、マナーではないでしょうか。
緑と清流を楽しんでマス!
自然に恵まれた嵐山町を、最近はたくさんの人が訪れます。槻川で遊ぶ人たちにわが町の印象を聞いてみました。
『嵐山町報道』357号 1987年(昭和62)9月25日
・川で泳げる楽しい所です(東松山大岡サッカー少年団の少年たち)
・知り合いが嵐山にいて毎夏来ますが、緑があって空気がきれいでとても良い所ですね(朝霞から家族キャンプの人)
・子供たちが、小さいとき遠足に来たのを覚えていてね。水がきれいだし危険も少なく子供に最適ですよ(岩槻からのお孫さん連れの老婦人)
・友人にいい所だと聞いてきました。バーベキューもできて楽しいわ(和光市からの若い女性グループ)
ほとんどが町外の人たちだったのか、インタビューした中には町内の人はいませんでした。嵐山町以外の人たちにも喜ばれ楽しまれているわが町の〝緑と清流〟、このすばらしい環境を維持していくためには、利用者にゴミの持ち帰りの徹底をお願いしていくことも、環境汚染を防ぐ意味で重要なことでしょう。