第6巻【近世・近代・現代編】- 第1章：地誌
太郎丸村
埼玉縣下武蔵國比企郡太郎丸村字午
村社 淡洲神社(あわすじんじゃ)一、祭神 豊玉姫命
一、由緒
抑々本社由緒書ハ慶應二寅年秩父地方ヨリ亂民蜂起シ来リ民家ヲ佗壊【破壊】シ或ハ放火スル際遺憾ナル哉由緒書類モ悉(ことごと)ク絡亂燃焼セラレ故ニ其詳細ヲ知ルニ由ナシ只口々ニ傳フルハ大化年中本社再建スル所ナルト自来年月久キヲ經ルヲ以テ之レガ修繕ヲ施スト雖モ元禄ノ頃。社宇大ニ披損ス是レヲ以テ猶再建スト云棟札*1ニ元禄八子年(1695)九月吉辰ト記載アリ今現ニ存立スル社宇ハ則之也*1：棟札(むなふだ)…由緒、建築年月、建設者などを書いて棟木に打ち付ける札。
一、社殿 間口貳間貳尺 奥行貳間七寸
一、境内 貳百四拾五坪 官有地第壱種
一、境内神社三社
菅原神社
祭神 學大神
由緒 末社菅公ハ本社ヨリ後ニ建立シタル由シ只口ニ傳フ本社右側ニ存ス
社殿 間口壱尺壱寸五歩 奥行二尺八寸
祭神 稲荷大神
由緒 末社稲荷大神ハ本社ヨリ後ニ建立シタル由シ只口ニ傳フ本社ノ右側ニ存ス
社殿 間口壱尺壱寸五歩 奥行二尺八寸
嚴島神社
祭神 市杵姫命
由緒 嚴島神社ハ石造宮ニシテ寛政戊午年（寛政十年(1797)）十一月吉日本村婦女子等ノ建立スル所ナリ
社殿 間口六寸五歩 奥行六寸
鳥居 高サ壱丈壱尺二寸 巾壱丈
旗掉置場 間口三尺二寸 奥行八間壱尺一、氏子 戸數廿三戸
一、管轄廰迄距離 拾貳里廿五町
以上
右【上】者明治十二年本縣第廿三号御達之基キ取調候所相違無御座候也
明治十七年五月六日 氏子惣代
大澤常十郎㊞
中村嘉十郎㊞
田幡慶三郎㊞
淡洲神社祠掌兼務権訓道寸
宮本廣野㊞
戸長代理筆生(ひっせい)
田幡載太郎㊞
比企横見郡長鈴木庸行殿
武藏國比企郡 太郎丸村
淡之洲神社境内上地*1官林字鎮守
従前反別三畝七歩 明治丗六年四月廿五日付境内ニ編入ヒ写届㊞一、改正反別 四畝五歩
東耕地 南現境内 平地
西道 北用水堀 赤交
木種
杉木目通*2壱尺四以上弐尺八寸迄 四本 長壱間
同 三尺四以上五尺七寸迄 拾本 長弐間
松木目通 六尺四□八尺五寸迄 五本 長三間
下草料無御座候 里程(りてい) 都幾川通菅谷村迄陸路三十丁右川岸ヨリ東京迄四拾七里廿丁右【上】之通リ御座候也
明治十二年七月七日 右【上】村
旧戸長 田幡宗順
埼玉縣比企横見郡長鈴木庸行殿*1：上地(あげち)…収公された土地。
*2：目通(めどおり)…目の高さで測った木の太さ。
村社淡洲神社(あわすじんじゃ)
字午三百七十三番
除税地反別八畝五歩
官林反別四畝五歩第六大區五小區
比企郡 太郎丸村
立会人 大澤作右衛門㊞
副戸長
田幡載太郎㊞
戸長
田幡宗順㊞明治十年四月十四日
丈量詰村扣
明治十年四月廿四日四人泊リ奥田氏其外三人御派出ニ相成該地御検査済ニ相成御取調候以上扣除地*3淡ノ(ママ)洲神社
境内反別八畝五歩
第六大區五小區
比企郡太郎丸村
立會人
大澤作右衛門㊞
副戸長
田幡載太郎㊞
戸長
田幡宗順㊞明治十年丑四月廿四日
*1：除地(じょち)…朱印地以外で租税を免除された土地。
『武蔵國比企郡 太郎丸村 社寺明細帳』